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上々堂(shanshando)三鷹

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2008年 12月 26日

ビートたけしとイッセイ尾形

以前多少ともにシンパシーを感じたことがある芸人に失望するのは、
ままあることで、いちいち気に停めてもいられないというか、所詮
TVなんてメディアはやはり芸人を堕落させるだけなのかとも思う。

ビートたけしは、とっくにただのメディアの駒になりさがったタモリや
さんまに比べて、話術に見る機知という点では抜きん出た存在だと
思っていたけど、TVタックルをやりはじめたあたり、いや映画監督
ごっこをやり始めた頃からうさんくさくなった。

まぁいやなら見なければそれで済むことだから、この頃はもし暇が
あっても彼が関係しているものは一切見ないようにしているが、一昨日
うかつにもTBSでやっていた太平洋戦史にまつわる番組を見てしまった。

まぁ番組が語る歴史観の問題はこの際置いておくにして、一番気に障
ったのはビートたけしのあまりに酷い演技だ。
どのように愚将で愚相であったにしても陸軍幼年学校から陸軍士官学
校を経て将校になった東條を演じるのに、まるでやくざの企業舎弟をやっ
ている不動産屋の親父のような演技だった。
姿勢が悪い、しゃべり方が下品、………べつに東條をもっと格好よく
演じるべきだというのではない。
いやむしろ東條なんて人間の中身は実際やくざの企業舎弟程度の下劣
愚昧であったかもしれないだろうと思うが、もし彼がその内面通りに外面
も行動していたら、誰も彼に信をおかず、従ってあのような愚かしい戦争
に国家が誤動される悲劇も起きなかっただろう。

ようするに彼(ビートたけし)は忙しさの故か、どのような役を演じるにあたっ
ても、対象を考察したり、自分の資質との接点を探ったりというようなことを
しないのだろう。
やはり彼が出演した中西礼のドラマでは、足の悪い兄を演じるのに持っている
片方だけの松葉杖の持ち手が逆だった。
使ったことある人なら誰でも判る事だが、あれは悪いほうの足の逆の手で
持つのだ。そんなことは周知の事実なのだからきっと製作中のスタッフにも
気がついた人がいたはずだと思うのだけど、えばりくさっている芸人の不興を
買うことを恐れて誰も注意しなかたのだろう。

一昨日のドラマでは野村萬斎が昭和天皇を演じていたが、あれもなんだかと
言う感じだった。妙に昭和天皇が雄々しすぎるのだ。
勿論私だって本物の昭和天皇、しかも敗戦以前の昭和天皇にあったことは
ないから、実際はああいうまるで戦国武将のような雄雄しさも持ち合わせていた
のかもしれないが、さまざまな昭和史資料で読んだり、戦後の映像を見たりする
かぎり、彼は帝王学を完全に叩き込まれた故に温和さと慎重さを持ちながら、
未曾有の国難を前にして怯えと深慮の為却って何事も自ら明言することを避けた
がる人間だったように感じられる。

ようするに、演出者が悪いということも言えるが、そこで思い出すのがソクーロフ
監督、イッセイ尾形主演の「太陽」だ。
勿論あの昭和天皇だってどこまで事実に近いかは判らないが、少なくとも私の
中では昭和天皇を思い浮かべようとする時、イッセイ尾形の演じたあの天皇を
払拭しては思い浮かべられなくなっている。
やはり、優れた役者と優れた俳優が真摯な態度で作れば映画やドラマはし史実よ
りも尚本当らしくなりえるのだ。
勿論それはある場合とても危険なことかもしれないが、下手な役者が下手な演出者
とともに大企業や為政者好みのプロパガンダだけを垂れ流す目的で作ったものよりは
全然ましに違いない。

by shanshando | 2008-12-26 14:26 | ■原チャリ仕入れ旅■


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