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上々堂(shanshando)三鷹

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2009年 08月 07日

海べのあさ

 1940年代といえば日本では地獄のような時代だったわけだが、海の
向こうアメリカでは今に残る文化が花咲いた時代だった。
ハリウッドは黄金時代をむかえ、モダンジャズやR&Bなどの音楽も
この時代に生まれた。


 何度か書いたように、絵本の世界でもこの時代は黄金期と呼ばれ、
さまざまな優れたイラストレーターたちがアメリカから生まれた。
 コルデコット賞の創設もこの時期で、アメリカ社会全体が、それまで
のヨーロッパ文化の亜流的発想から抜け出そうという意志を持っていた
ことを感じさせる。

 今も日本の子供たちに読まれるロバート・マックロスキーの作品も
殆どがこの時代に作られているが、今日書影をあげる「海べのあさ」は、
1952年のもので、世界はすでに冷戦時代をむかえ、アメリカでは未だ
マッカーシズムの嵐が吹き荒れている。

 絵本の主人公サリーはマックロスキーの作品にたびたび登場する
彼の長女で、原題は「One Morning in Maine」。
 マックロスキー一家は1944年からメイン州の無人島で住んでいたのだ。

 1944年から52年、そしてその後も世界では多くの子供たちが理不尽な
死に追いやられていく。マックロスキー一家のその後のことは知らないけど、
絵本の中の子供たちはいつまでもありあまる愛情をそそがれていて、それは 
当時も今も多くの国が得られないでいる「豊かさ」の象徴のようでもある。

 ちなみに「海べのあさ」の初版出版年である1952年、日本では手塚治虫の
「鉄腕アトム」の連載が開始されはじめ、朝鮮半島は戦乱の最中にある。


海べのあさ_c0020598_159458.gif


上々堂売価 950円

by shanshando | 2009-08-07 15:10 | ■原チャリ仕入れ旅■


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