上々堂(shanshando)三鷹

shanshando.exblog.jp
ブログトップ
2010年 08月 08日

古書店の棚は意味ある偶然によって構成されていること

今朝、「美酒と革嚢」という本を仕入れました。
これは伝説の出版社「第一書房」を立ち上げた人物に関する書物
なのですが、そのことはひとまず置いてですね。
先週私は宇野信夫という劇作家に関して調べていて、彼が書き下ろした
創作落語「大名房五郎」に関係して、安土桃山から江戸初期に亘って
活躍した画家 岩佐又兵衛に関して調べたのです。まぁ興味深い人ですが、
これもやはりひとまず置いて、
そのもっと前の週、私は非常に個人的な関心もあって棚にあった伊藤文学氏の
著書を読んでいたのです。

こういうことが、本当にたまさかあるのですが、毎週諸方面から売って
いただくに任せて仕入れ並べている書物群のなかから、まったく無意識に
拾い出した情報が偶然の糸で結ばれていることに後で気づかされて、驚かさ
れる……これは、ひょっとして、なにか…チョーエツ的な存在に意図され
ている………なぁーんてことはまぁないですが。ちょっとした不思議であ
ります。

あの、なんのこっちゃい?とか思っています?
まぁご存知の方はこの三つの体験がどういう関係の糸に結ばれているか、すぐ
判っちゃってると思うんですが、関心がなければ「なんのこっちゃい?」
が普通だと思います。

歴史的な時系列に直して、関係を書いてみます。
まず岩佐又兵衛、この人は荒木村重の庶子で、後年浮世絵といわれる絵画の
始祖だともいわれています。その画風はかなり個性が強く、なかでも東京国立
博物館に所蔵されている舟木本 洛中洛外図屏風は数ある洛中洛外図のなかでも
見ごたえのあるものだとされています。
時代は下って昭和3年、神田の超名店一誠堂さんによって、この又兵衛さんの
作品のひとつ「山中常盤物語絵巻」がドイツ人に売却されようとした時、私財
家財を抵当に入れたお金でストップさせたのが、「美酒と革嚢」の主人公長谷川
巳之吉さん。
この巳之吉さんの経営していた「第一書房」は大正12年の創業から昭和19年、
出版社の統廃合によって廃業するまで、豪華な装丁の本を出し続けたことで有名
なのですが、戦後は隠棲して、周囲の声にも耳をかさず事業の再興をあえてしな
かったのですが、この時再興に熱心で結局果たされぬままに、自分で「第二書房」
という出版社を立ち上げたのが、伊藤祷一という元第一書房社員で、これが伊藤
文学氏のお父さん、やがてこのおとうさんから事業を引き継いだ文学氏がわが国
初のゲイ専門雑誌「薔薇族」を立ち上げたというわけです。

まぁ、こうやって書いてみたら、「それがどしたの?」てなもんですが、勿論の
ように古本屋は入ってくる本の全てを読んでいるわけでもなく、また特にあらかじめ
関係のありそうな本ばかり系統的に読んでいるわけでもないのに、こんなふうに
繋がってしまうとなんだか……不思議……とまぁそうういうことでした。
[PR]

by shanshando | 2010-08-08 13:25 | ■原チャリ仕入れ旅■


<< やせがまん      ワカケホンセイインコ >>