5月3日火曜日 晴れ
石川啄木、と言えば、国語の授業で習う数少ない歌人のひとりとして、
短歌に興味がなくとも、ご存知の方が多いかと思います。
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ふるさとの訛なつかし
停車場の人ごみの中に
そを聴きにゆく
『一握の砂・悲しき玩具』(新潮文庫)より
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有名な歌。授業では、この語順が重要と教わったおぼえが。
「停車場の人ごみの中で聴いたふるさとの訛がなつかしい」、
これは直訳ですが、この歌で大事なのは、5句目であえて
「そを聴きにゆく」と、そのなつかしさに反応した「われ」を
強調しているところにあると。
それがなんとも言えない、感傷的な余韻をのこす。
しかし、石川啄木の歌は上の直訳のような平凡さが指摘される
向きもあって、意外と賛否はわかれているようです。
わたしはあまり知られていない、こんな歌がすきです。
啄木は「キス」を景色にするのがとてもうまいと思います。
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やや長きキスを交して別れ来し
深夜の街の
遠き火事かな
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