2005年 05月 13日
2005年5月13日金曜日 曇り寒い 不思議な光景を見た。 大きなテーブルを囲んで7,8人の男女が座っている。 中に一人禿頭に鼻髭を蓄えた男がを居眠りをしている。 服装から察するにタクシーの運転手らしい。 他の6、7人はめいめいが、時折眠っている男を気にしながら、 黙々と食事をしている。 今夕、私が食事に入った定食屋での光景で、合いがけの 大テーブルに座っていた客のひとりが眠っていて、他は 別段無感動にそれを眺めていたというそれだけの事だが、 妙に儀式めいた雰囲気があって、面白かった。 一人で採る食事は生理的な作業であるが、複数でするそれは 儀式になる。 その儀式が好きな人も、嫌いな人いる。 望んで得られない場合もあれば、嫌なのに付き合う時もある。 通常、食堂とか定食屋は他人同士が向き合わなくてよいように 席をわけているが、最近前述の店のような大テーブルを用いる 店が増えたように思う。真ん中に造花など置いているが、実は 客の回転をよくする為に、微妙に居心地を悪くしているのかも しれない。しかし、そのテーブルで堂々と寝込む客がいたのでは、 折角の作戦も無駄である。 もうひとつ、食卓にまつわる光景を思い出したのでついでに書く。 夏の昼下がり、私はいつものように古本屋廻りをしていて、東京の 南の方にある、さる商店街からさらに少し離れた古本屋に入った。 昔からのオーソドックスな造りの店で、少し開いた障子の向こうに その家の座敷が見え、さらにその左傍らには縁側があり庭も見えて いてなかなか結構な造りである。 よく見ると障子の陰から老人のものらしい痩せた素足が4本見えた。 時間的に察して食後の昼寝をしているらしい。始めは畳の色と同化 していて気付かなかったのだ。 私は店に入る時に「お邪魔します。」とわりと大きな声で挨拶した のだが、気付いて貰えなかったらしい。 「好都合かもしれない。」と、思った。 見渡したところ買えるものはなさそうだ、気付かないままのほうが イザという時、出ていきやすい。そう思いながら、ひと棚ひと棚 チェックしていると、ふいに奥の座敷で老婆の声がした。 「オジイサン、やっぱり水瓜だけでは、お腹が空きますねー」 私は慌てて外に飛び出すと、ひや汗を拭った。 他人の秘儀に立ち入るべきではない。
by shanshando
| 2005-05-13 22:51
| ■原チャリ仕入れ旅■
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