2005年6月23日 木曜日雨のち曇り
思うに、古本屋ぐらい本を読まない人種はいないのでは
あるまいか?
毎日のように大量の本を扱い、そのページを繰ってはいるが
読んではいない。
読むのは、大抵奥付くらいで、後は落丁書き込みがないかを
確かめるだけ。
たまに、初見の本を見ると目次やあとがきから内容を推察して、
必要な箇所だけ拾い読みしたりするが、通読することは滅多に
ない。
通読しないくせに大量の文字に接して、日々を送ると人間の脳は
どうなるか?
脈絡を失った言語の群れは渦となって、無意識の闇に吸い込まれ、
やがて夢魔となって古本屋を狂気にいざなう。
大仰な妄想とお思いか?
ウィークデイの午後、神田古書会館のそばの喫茶店は関東一円
から集まった古本屋で埋まる。
彼等は一見、穏やかな紳士であるが、試しに誰かがトイレに立った
後をつけてみるといい。
狭い個室の中で彼等は意味不明の呪文のごとき言葉の羅列を漏
らしている筈だ。
溜まりに溜まった言語の澱が糞尿と共に溢れ出しているのだ。