上々堂(shanshando)三鷹

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2005年 07月 29日

古本屋の掃苔帖 第十六回 森敦

昭和9年、横光利一の推薦を得、新聞連載した「酩酊船」
から実に40年の沈黙を破り、「月山」で芥川賞を得た森敦
は、その時点ですでに62歳であった。

直木賞とともに文壇の登竜門といわれたこの賞も最近では、
そこから出た作家たちのその後の営業成績の悪さから、
出版業界の人々からは軽んじられていると、先日テレビの
経済番組で言っていたが、そんなことを森敦が存命で聞い
たならどう思っただろう?
本人が受賞する以前にも小島信夫や斯波四郎などを指導し、
芥川賞をとらせしめた森敦の生涯はまさに純文学の殉教者
のようだ。
また、いくらその批評や指摘が鋭いとは言え、そんな昔にちょ
っと注目されただけのオヤジの意見にしつこく耳を傾け続けた、
小島や斯波の姿勢も今の人間からは想像しにくいものだろう。

とにかく、小説「月山」はやはりこのオヤジが只者でないことを
証明してみせ、それから後の15年間、森は遅ればせながら
文壇の中に本来自分のいるべき位置をとりもどす。

1989年6月29日帝国ホテルで行われた岩波ホール支配人
高野悦子の還暦の祝いで、趣向として神父の役を演じてみせ
た森はその翌日から突然入院し、一度は退院するが、7月
29日腹部大動脈瘤破裂で死去する。

腹部大動脈瘤破裂という死因はどこがどうなるのか知らないが、
何しろ「金玉が、痛いっ!」と叫んだそうだ。

毎日のようにいろんな末期を調べていると、死という奴は一体
何処から来るのか油断ならん、と思う。

森敦 1989年7月29日、享年77歳
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by shanshando | 2005-07-29 00:15 | ■古本屋の掃苔帖


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