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上々堂(shanshando)三鷹

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2005年 08月 12日

古本屋の掃苔帖 第二十九回 福永武彦

一昔前、文学青年というステレオタイプなイメージがあった。
大概痩身で、前髪ぱらり、結核を患ってるから肌が青白くっ
て、何か言うたびゴホゴホ咳き込む。
そういうのがかっこ良くって、女の子にも非常にモテタ。
あんまり、デブで五分刈りで、水虫患ってて、肌が炭団のように
黒くて、何か喋る度にニンニク臭いなんて文学青年はなかったし、
あっても女の子にモテなかっただろう。
今、どうなんだか知らないけど昔はそういうのがモテたものだから
、先祖代々軽薄が家訓の私なんぞは、なんとか真似ようとしたが、
髪の毛が超天パーで、前髪パラリが無理な上、身体が因果と丈
夫で…。

福永武彦、堀辰雄というと、そういった「ステレオタイプ文学青年」
の総大将というか、元締めというかそういう感じで、実はなんとなく
気恥ずかしくってあんまり読んでない。
このたび短編を数篇読んだが、どうもキリスト教的な自愛の匂い
が強くって、そうなんだかやっぱり気恥ずかしい。
「玩草亭百花譜」はいいね。やっぱり植物とか自然を感受する力は
健康体より、衰弱体のほうが優っている。
それから「飛ぶ男」も面白かった。

昭和54年8月13日の早朝、佐久総合病院で亡くなっている。
夏の早朝信州でか、福永武彦だねぇ。
享年61歳

by shanshando | 2005-08-12 23:58 | ■古本屋の掃苔帖


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