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2005年 08月 18日

古本屋の掃苔帖 第三十三回 北一輝

まず、北一輝がどういう人間であるのかを説明する
必要がありそうなのだ。
昨日から知り合いの20代の若者数人に確認したところ
「それ誰?」という答えが圧倒的多数だった。
知っていた少数派も精々教科書的な知識どまりで、
北という人間の思想や歴史的影響まで理解していた人は
皆無だった。
やはり、いつか書いた坪内祐三氏の「1972」で述べられて
いるような、歴史認識の断層があるのかもしれない。

北一輝は2.26事件の黒幕として処刑された思想家である。
23歳の時に「国体論及び純正社会主義」という著書を書いて
いる。
この本はようするに、天皇制を基調にしたままで社会主
義革命やっちゃおうよ!というもので今の若い人が聞くと、「
なにそれ、ようするに北朝鮮みたくなっちゃおう!って事?」
と思うだろう。
「ぜったい嫌っ!最低!」とか思うだろう。
ところが当時は、というのは明治39年くらいだけど、これが
うけたのだ。
「よっ!一輝ちゃんやるね。えっ、いいですよ最高!」
なんてぇことは言わないだろうけど、とにかく当時はもう流行
の最先端の思想というか、世を憂う、なんていっても最近の若い
人はわかんないだろうけど、ようするに問題意識をもってる当時
の人たちはみんなこれを褒めっちゃった。
ほんの23歳の若者だけど、もう何処へ行っても下へも置かない。
「先生、ひとつご意見を…。」なんていわれっちゃって、天狗になっ
ちゃった。
まぁ、それほど当時としちゃ先見性のある意見だったわけだ。
社会主義とか民主主義なんてぇものは机上の空論みたいだけど、
ほら、こうやって天皇制とくっつけっちゃうと、なんとなくほら!ね?
なんて言われちゃうと、「ああさうだね、ほんたうだ。」なんっちゃって。
ところが、この意見は国を実際に運営してる連中にはあまり受けが
良くなかった。
天皇制の部分にはさほど異論はないんだけど、社会主義ってぇ事に
なって個人の財産を制限するとか、そういうことになると折角の高額
納税者のお旦たちが困んだろう。駄目だよ。ボツ!なんてね。
でっ、国の上層部には不人気だったけど。下の連中には受けがよかった。
特に軍隊なんてえ処は色々貧しい出の連中が多いから、「そういうことサ
なれば、俺んとこみたいな貧乏村も潤うべ。」なんつって。
そいで、2.26やっちゃったんだけど。
まぁ当人は若い頃から天狗になっちゃったもんだから、やっぱり若い頃か
ら凝ってるオカルトで色々御託宣はだしちゃう。財閥おどして金巻上げちゃ
う。やりたい放題。
2.26の時は一応本当は直接関わっていなかったかもしれんけど、生か
しとくとまた面倒だからってんで処刑されっちゃう。
最後、というのは処刑の前に相棒の西田税に「天皇陛下万歳を三唱しま
すか?」と問われ「それには及ぶまい、私はやめる」といっている。
昭和12年8月19日刑死、
享年54歳。
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by shanshando | 2005-08-18 23:47 | ■古本屋の掃苔帖


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