2005年 08月 25日
ジョージ・プリンプトン「トルーマン・カポーティ」を読んだ。 生前のトルーマン及び彼の親族等についてのいろんな人 々の証言を編んだ本である。まず装丁がカッコいい。 表紙に蝶ネクタイを締め、サスペンダーを両方の親指で 引っ掛けて押し開いた、トルーマンの上半身の写真を 使っている。写真はリチャード・アヴェドン、装丁は新潮社 装丁室。原書を見てみたくなる。 編集方針というか、まとめかたが面白い、陳腐な言い方だが 人生曼荼羅というかんじ。有名無名さまざまな人の証言を 読み進むうちに、トルーマン・カポーティーという人間と自分が 身近に接したような、そんな錯誤に陥る。興味深い。 トルーマンは幼いころにアラバマ州モンローヴィルにあった親戚 の家に預けられる。母親が名声と富を追いかけてニューヨーク に行き、幼い彼を置き去りにしたのである。この幼時体験は当然 のように彼の人格形成に大きく影響したようである。 背が低く貧弱なトルーマンだが、おそらくは母親譲りのナルシズ ムで自分を魅力的に見せる術や機知に富んだ会話で人を引きつ ける才能をもっていて、それがやがて時代の寵児となる作家に彼 を育てる。 彼がゲイだったことは有名だが、この本の中でもそれがらみの話 題が中心になっている。その中でも興味深かった話の一つに、パリ の男娼デナム・フーツにまつわる逸話がある。当時ヨーロッパの上 流社会でモテモテだったデナムがトルーマンの最初の長編小説 「遠い声 遠い部屋」の裏表紙に載せられた彼のポートレートに惚れ こみ、ただ「COME」とだけ書いた白紙の小切手を送ってきたという のだ。実際はこの時の彼は23、4歳になっているはずだが、写真で 観るとハイティーンの少年に見えるのだ。ソファーに横たわった上半 身だからチビも目立たない。 華やかな仕事や恋愛、薬そしておそらく最後に彼の命を奪うきっかけに なったアルコール。いろいろな享楽や名声を味わいつくして、彼は1984 年8月25日60歳で世を去る。 彼の最後に立ち会ったのは、同性の恋人ではなくジョアン・カーソンと いう女性の友人である。 病院に連れて行こうとする彼女に懇願して、彼女の家の彼女の胸の中 で死んだ。 幼い頃の彼を身勝手ゆえに孤独にさせた実の母親が死んだ時にはヨーロ ッパに居て、「火葬にしておいてくれ」と冷たくあしらった彼だが、ジョアンの 胸の中で言った最後の言葉は「おかあさん」だったそうである。出来すぎな 気もするが真実だろう。 死因は心臓麻痺。
by shanshando
| 2005-08-25 00:48
| ■古本屋の掃苔帖
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