上々堂(shanshando)三鷹

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2005年 08月 27日

古本屋の掃苔帖 第四十一回 ミヒャエル・エンデ

古本屋カール・コンラード・コレアンダーへようこそ。
店主のコレアンダー氏は、ブルドックに似たデブで
禿げの口やかましい中年男。子供なんか大嫌い。
小さな店の四方の壁には天井までとどく本棚に、あり
とあらゆる形の本が並べられ、床には大判の本が
、そこここの机には縁が金色に輝く小型の革表紙の
本が積みあげられている。
さて、冷たい雨が降る11月のある朝、ここに一人の
やっぱりでぶっちょの少年が飛び込んでくる。
名前はバスチアン・バルタザール・ブックス。
「はてしない物語」の序章である。
店主のコレアンダー氏はすべてKではじまる名前、
少年はすべてBではじまる名前。つまりこれはBと
Kの邂逅から始まる話なのだ。つまり餡子はOO無限
大というわけか。

物語によって人が享受するものの可能性を信じ、自ら
も優れたいくつものファンタジーをみんなにプレゼントし
続けたこの作家は、しかしそのファンタジーを営利の対
象としか考えられない人々の悪意に生涯何度も苦しめ
られた。
著しい例は1984年に公開された映画「ネバーエンデ
ィング・ストーリー」である。
この、原作者の意志を完全に無視した、陳腐な勧善懲悪
ドラマに対して、彼はせめてクレジットから原作者としての
自分の名前をはずすように抗議したが、訴訟によってすら、
ついにそれは認められなかった。契約時に条件を精査しな
かった彼に責任があるというわけだが、どうだろう?
したたかな映画産業の悪意としか、私には思えない。

また、これはあくまで個人的な思いだが、日本でエンデの
資料をたくさん収蔵していることで有名な「黒姫童話館」
にも私は行こうとは思わない。エンデにはたいへん興味
はあるのだが、あきらかに元あった自然をむりやり捻じ曲
げる方針で経営されているあの地の観光行政に疑義を感
じるからだ。エンデがあんな事をよしとしていたとは思えない。

ミヒャエル・エンデは1995年8月28日癌により他界している。
享年66歳。
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by shanshando | 2005-08-27 19:14 | ■古本屋の掃苔帖


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