上々堂(shanshando)三鷹

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2005年 08月 31日

古本屋の掃苔帖 第四十二回 シャルル・ピエール・ボードレール

アンリ・トロワイヤ著「ボードレール伝」はマザコンで
道楽者のボードレールが、如何にして莫大な父親の
遺産と自分の人生を浪費したかについて、くどくどと
書かれている書物である。
「あと三ヶ月で、ぼくは四十五歳になります。……借金
を返済し、自由で名誉ある晩年を維持するための資産
を保全するのにも、たぶんもう遅すぎるでしょう。けれど
万が一、僕が何度かは享受した若さと活力を取り戻す
ことができたら、人々を驚倒させるような本を何冊も出し
て、自らの怒りを鎮めるでしょう。僕は人類全体を僕に
敵対させたいのです。」
彼は一体なんに怒っていたのだろう?
「悪の華」を不道徳だと訴えた連中だろうか?
「僕のお母様」を奪った義父だろうか?
それとも梅毒だろうか?
「他人とは異なりたいという欲求と、凡庸に対する恐怖は、
彼をして、一種の文学的偏執狂にまで至らしめた。」
(前出、「ボードレール伝」より、ヴィクトル・フールネルに
よる新聞記事)
世にマザコンで浪費家で自己顕示欲の強い人間なんて
幾らも居るが、皆がボードレールになれるわけじゃない。
彼を狂気に至らしめたのは、「詩の毒」ではあるまいか。
ある種の表現行為は取り返しがつかない、毒と死の連鎖に
人を追い込む。
彼はコンプレックスの固まりだった。彼は女性に関してゲテ
モノ好きだった。彼はサディスティックだった。そして、彼は
そんな自分を見世物にしたがる変態でもあった。なんと楽し
そうな人生だ。
狂ってからの彼と駅で遭ったある友人は、彼に握手のかわりに
髭をひっぱられて、「ああは成りたくないものだ。」と言ったいう。
つまらない奴だ。ただちょっと、ひっぱってみたかっただけだろうに。
そんなこと私だってチョクチョクやる。

1866年、病によって充分に冒されていた脳の症状に拍
車をかけるように薬物を乱用し、ついに狂気が本格化した
彼は療養所にいれられ、「畜生」という言葉をくりかえし、
1867年8月31日の朝、もうその言葉も出なくなって、死亡
する。享年46歳。
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by shanshando | 2005-08-31 00:45 | ■古本屋の掃苔帖


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