上々堂(shanshando)三鷹

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2005年 09月 03日

古本屋の掃苔帖 第四十六回 佐々木つとむ

三道楽煩悩と申しまして、「呑む、打つ、買う」
というこの三つにのめり込むと身を誤ると申します。

「申します」つったって、のめり込むから「道楽」なの
であって、のめり込まなきゃ只の「趣味」だ。
だいたい、欲望に抑制を効かせられないから芸人になっ
たのであって、効かせられたら銀行員にでもなってる。
道楽は芸の肥やしだ。のめり込むだけのめり込んで、その
挙げ句、オンナに殺されたって後悔なんかするもんかい。
あの世で佐々木つとむが、独りごちているかもしれない。

そりゃあ、やりたいことをやって挙げ句死んじゃったアンタは
それでいいだろうけど、アンタのお陰で人一人殺めて、自分も
死んじゃったオンナは浮かばれないだろう。第一アンタの女房
子どもは……

「ソレを云っちゃあ、おしまいだよ…」

佐々木つとむを覚えてますか?
得意ネタは藤山寛美と高倉健と鶴田浩二と渥美清のマージャン。
いろんな人が「寅さん」の物真似をやっているが、佐々木つとむが
ぴか一だった。

1987年9月4日高島平のアパートで愛人に刺されて死んだ。
博打の借金で首が回らなくなって、荒れて暴力をふるうようになり
とうとう耐えられなくなった愛人が刺したのだといわれている。
2日後愛人も水死体で見つかっている。

佐々木つとむの事を書いている本は、私が知る限り一冊だけである。
矢野誠一「酒と博奕と喝采の日日」。文庫版もでている。
矢野誠一が「オール讀物」に書いた芸人の話を集めた物で、「さらば
愛しき芸人たち」の続編である。
愛情のこもった良い文章だが、佐々木つとむを可哀想がってばかりいるので、
かえって愛人の女性や家族の気の毒さが心にひっかかった。

昨今の芸人は器用でまた努力家タイプが多く、物真似や芝居も巧いも
んだが、佐々木のように一芸を磨くというか、一芸にすがるようにして生
きて、結果人生のアクが芸の厚みになるような芸人がいないのは寂し
い気がする。
まぁ寄席に行けばまだいくらもいるが。
ゾロっぺで不良で、弱くて怠け者で、一生文化勲章なんか貰えそうも
ない。そんな芸人のほうが、やたら渋みを追求したり、演技派ぶったり
する芸人より私は好きだ。

佐々木つとむ、享年40歳。死因は心中ということで、どうでしょう?

ところで関係ないが、サザエボン以来よくある折衷キャラクターで、
「フーテンのタラ」ってどうでしょ?
タラちゃんが、寅さんの格好してて「それを云っちゃ—おちまいデチュー」
とか言うの。誰かキャラクター化したらアイデア料ちょーだい。
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by SHANSHANDO | 2005-09-03 22:44 | ■古本屋の掃苔帖


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