上々堂(shanshando)三鷹

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2005年 09月 06日

古本屋の掃苔帖 第四十八回 泉鏡花

泉鏡花が尾崎紅葉に入門するために上京し、中々
その機会を得ないままに彷徨した一年間に男妾を
していたという説があることを、「新文芸読本 泉鏡
花」を読んで初めて知った。
上京当初は、医学生の福山某という友人をたよって
その男の下宿に同棲したのだが、これがいい加減な
奴で、下宿代を溜めたままでドロンしちゃったので、
人質のようになった鏡花が家作を持っている中婆さ
ん(幾つぐらいの年齢を言うのだろう?)に妾として、
売り飛ばされたというのだが、これはどうも鏡花自身
が作ったフィクションのような気がする。
鏡花には老女あるいは醜女に犯されたい被虐願望が
あったのではないか?

鏡花の作品を読めばこの中婆さんを彷彿させる登場
人物がたくさんある、たとえば「絵本の春」という作品
に出てくる易者の小母さんなどは、妖怪よりも妖怪じ
みた人間として描かれているが、その主人公の少年
に対する迫らせ方はまさに強姦寸前という感じである。

鏡花が9歳の時、実母すずが産褥のため死んで、2
年後父が迎えた後妻になじまず、弟豊春を教唆して
義母いびりをしたとあるが、まだ幼かった豊春自身は
初めむしろ義母になついて抱かれたりしていたという
記憶が鏡花にあり、おそらくは既に性徴期に差し掛か
っていた鏡花が複雑な嫉妬心を抱いたであろう事は、
想像に難くない。
この義母との関係が、亡くなった実母の美化とともに
鏡花の独特の女性観と、そしてそれにつながる妖怪
趣味に発展したというのは暴論だろうか?
異世界に住する故に、いっそ清らかな存在と、この世
に住まう魍魎というイメージ。そして、実は鏡花自身は
この魍魎のほうに犯されるように愛されたいのだ。

明治、大正、昭和の三代に渡ってこの国に起こった様
々な文学の潮流に押し流されることなく、独自のスタイ
ルを貫き通したこの作家は昭和14年9月7日肺腫瘍
の為亡くなっている。享年65歳。
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by shanshando | 2005-09-06 17:10 | ■古本屋の掃苔帖


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