上々堂(shanshando)三鷹

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2005年 10月 09日

古本屋の掃苔帖 第七十五回 オーソン・ウェルズ

「ベビーベッドの中でまだオギャーと泣いてない時に
 ”お前は天才だ”と耳元にささやかれたんだ。…自分が
天才じゃないなんて中年になるまで思いもしなかった。」
バーバラ・リーミングの「オーソン・ウェルズ偽自伝」に
出てくる言葉。
生後18ヶ月の時に兄の傷の治療に来ていた医者に、ベビー
ベッドの中からこう話しかけたというのだ。
「薬をのみたがる気持ちは、人間を動物と区別するもっとも
大きな特徴のひとつだ」
いやぁ眉毛が唾でグショグショになっちゃいますなぁ。
しかし、オーソン・ウェルズのあの異相を見ていると危うく
信じちゃいそうになるから不思議だ。
唯一の証言者である医師モーリス・バーンスタインはくわせ
もので、実は美貌の母親に取り入るチャンスを伺っていたのだ。
お陰で両親は離婚する事になる。
しかし、先の逸話にはスケベ医者の脚色があるにしても、オー
ソンが神童だったことは確からしく、幼くして音楽から絵画、
奇術にいたるまでこなし、他の子供がようやく文字を覚える頃
にはシェークスピアを暗誦し、9歳で初体験まですませている。

彼の父親はどちらかというと失敗作のほうが多い発明家で、そ
の点、オーソン自身も少し似ている。
二十代半ばに初監督した「市民ケーン」でいきなりアカデミー賞
を受賞しているが、その後の多くの作品で最終編集権を剥奪される
などした為、駄作を連発している。
映画監督として、天才的なひらめきと強い交渉力をもちながら何か
が欠けていたのだろう。
しかし、俳優としては間違いなく名優で、代表作といわれる「第三
の男」では全上演時間の10分の1も出てこないのに強い存在感で
映画全体をさらっている。

晩年に至るまで監督作品への情熱を燃やし続けているが、ついに
「市民ケーン」を超える作品を作れないまま1985年10月10日心臓
麻痺のためロサンゼルスの私邸で亡くなっている。享年70歳。
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by shanshando | 2005-10-09 15:18 | ■古本屋の掃苔帖


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