上々堂(shanshando)三鷹

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2005年 10月 15日

古本屋の掃苔帖 第八十回 ジャン・ド・ブリュノフ

フランスの画家ジャン・ド・ブリュノフ氏をご紹介
する前に、ぞうの王様ババール氏を紹介する必要が
あるでしょう。
この王様は永くフランスのみならず、世界の子ども達
に愛され続けている偉大なぞうなのです。

まだほんの小さなころに、おかあさんを悪い猟師に撃ち
殺されたババールは、ジャングルを後にパリの町に
逃げてきて、親切な老婦人に出会い、老婦人の屋敷で
二年間愉快に過ごします。ところが、ある日散歩の途中
二人のいとこアルチュールとセレストに出会い、二人と
供に懐かしいジャングルに帰って行きます。ジャングル
ではちょうど王様が毒キノコにあたって死んでしまった
為、都会的なセンスを身につけたババールが新しい王様
に選ばれ、セレストとの恋も実って、ハッピーエンド。
と、ここまでがジャン・ド・ブリュノフが描いた第一作
め「ぞうのババール」のあらすじ。

この後物語は新婚旅行に出かけたり、三つ子の子ども達
が生まれたり他にもいろんなおはなしがあるのですが、
ジャンが描いたのはババール物語としては五作目にあたる
「ババールとサンタクロース」まで、あとのおはなしは
長男のロラン・ド・ブリュノフが描いています。

ジャンは三十代になったばかりで、結核に感染し三十八歳
で死んだのです。
第一作「ぞうのババール」を出した1931年にはすでに自
分の命と家族の将来に不安を覚えていたはずで、物語の
最初におかあさんが死ぬのはその為だと思われます。
はじめに死という逃れられない現実に直面させられた子ど
も達は、物語の中で人とのめぐりあいにより徐々に幸せを
取り戻していくババールと体験を共にし、救われていきます。
ジャン自身の切なる願いだったのでしょう。
第四作「ババールのこどもたち」ではババールにこう言わ
せています。
「くろうするだけのことはある あの子たちのいない く
らしなんて とても かんがえられないよ」

鳥越信著「絵本の歴史をつくった20人」によると、ババール
の初版は、縦36.5センチ横26.5センチの巨大なもので、モー
リス・センダックはこの大きさこそブリュノフの絵にとって
決定的な要素だと言ったということです。
子ども達には持て余しかねる程のこの大きさが、子ども達に
父親の胸に遊ぶようなやすらぎを覚えさせるのかもしれません。
残念ながら、現在日本で出ているものは一回り小さなサイズです。

ジャン・ド・ブリュノフは1937年の明日10月16日スイスの療
養所で亡くなっています。
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by shanshando | 2005-10-15 21:36 | ■古本屋の掃苔帖


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