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2005年 10月 19日

古本屋の掃苔帖 第八十三回 吉田茂

英米の古本愛好家にはチャーチル関係の本を
好んで蒐める人が少なからずいると聞く。
チャーチルは首相在任中、ノーベル文学賞を
授与されているほど文筆家としても歴史に名を
留めている。

日本の宰相で、本が売れるのはなんと言っても
田中角栄と吉田茂だろう。東條英機をそこに加え
るべきだとの意見もあるが、田中、吉田の人気と
東條に対する関心には多少違いがあるようだ。
また田中も著書らしい著書は「日本列島改造論」
くらいで、読者が関心をもつのはむしろ彼に対する
研究書、伝記の類いだから、チャーチルに比すべき、
日本の宰相はこの点でもやはり吉田茂ということにな
ろう。
サライなど大人向けの雑誌も毎年のように彼のライフ
スタイル等を紹介している。

エリート好きで、一生のうちに接した庶民は女中と
執事だけだったと言われる吉田は実際遭うと、ただの
嫌な爺ぃだったかもしれないが、活字の向こうの偶像
としてだけお付き合いする分には、なかなか愉快な親父
である。

羽織袴に白足袋のスタイルを貫き、太っているがために
悠揚せまらぬように見える彼の姿に戦後の国民は安堵を
覚えた事だろう。国豊かになり今やデブの政治家は流行
らないようだが。

1967年10月20日老衰のため亡くなった吉田茂は、死後
洗礼を受け ヨゼフ・トーマス・モアという洗礼名を得て
いる。
「死にそうになったら、洗礼を受けて天国泥棒をやってや
ろう」などと生前語ったらしいが、実は26年前に先立って
いるカソリック教徒だった妻雪子への愛惜であったのでは
ないかといわれてる。死んで初めて私人となったというわけか。
享年89歳

余談だが、保阪正康著「吉田茂という逆説」の冒頭に、功罪
嫌悪は別にして歴史に名を残す昭和の総理大臣として、私
がこの文の冒頭にあげた三人をあげているが、読んでいて
気づいたのは、三人とも監獄を体験しているという事だ。
そこで考えたのが、現在絶好調でヒロイズムに鼻の穴を膨ら
ませている感のある小泉総理だが、もし彼が千載に名を残し
たいと思うならば、一丁最後に汚職でもやらかして監獄を体験
しては如何だろう?もし今までにすでに入ってなければだが。
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by shanshando | 2005-10-19 21:48 | ■古本屋の掃苔帖


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