上々堂(shanshando)三鷹

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2005年 11月 16日

古本屋の掃苔帖 第百五回 メアリー一世

女性天皇に関する話題が新聞紙上をにぎわしていますが、
血統保持の立場から合理的にみるとすれば、完全に女系
優先にしたほうがいいという意見は昔からあります。
つまり、王が男性であった場合、妃あるいは妾によって
生まれた子供が確かに王の子である確証は、女王の場合より
得にくいわけですから…。

さて、本日は講談調で、
パンッ!時は16世紀、処はイギリス王室。王様ヘンリー八世は
傍らに座った后のキャサリンを見て深い溜め息をついており
ました。
「ああ、この女房とも連れ添って永いが、どうも困ったもんだ、
これは元々亡くなった兄貴と政略結婚させるため、親父がスペ
インから呼んだんだが、兄貴が死んじゃったから俺にお鉢が廻
ってきやがった。元々惚れて一緒になったわけじゃないから、気
が合わねえ。気が合わねえから子供だって、このメアリー一人し
か出来やしねえ。またこのメアリーが女房似で、まぁ自分の娘に
こういう事いうのも何だが、ぶっさいくで…。おっと、これは言わね
えお約束だ。しかしこのままじゃ、ご先祖さまに申し訳がた
たねぇぜ。」
と愚痴りながら部屋のなかを見渡しますと、昨日まではそこに居
なかった新顔の女官にお目がとまります。
「おいっ、おいっ三太夫!」(イギリスで三太夫は無茶か?)
「おいっ!ちょいと耳ぃかせ!えぃ、かみさんに聞かれねえように
耳かせってぇんだ。」
「へい、なんでしょ?」
「おい、あの女官はなんてぇんだ。あの新顔だよ!」
「へい、ありゃあのアン・ブーリンってぇんで、フランスから来
ました。」
「よっ!おフランスは結構だね!いい女だっ!あれなんとかしろ
いっ!」
「なんとかしろい!つたって、本人の意志ってもんがありやすから。」
「何言ってヤガンデぇ、今16世紀で俺は王様じやねえか、なんとでも
なんだろう。なっ!うまくいったら牛角で焼き肉おごるから!」
かなんか言いまして、この女官にお手が就きます。お手が就きますってい
うと、今度は自分から惚れた相手ですから、俄然キャサリンより、アン
が可愛くなります。
「三太夫!三ちゃん!あのさぁ俺さぁ、やっぱアンちゃんと結婚すっか
らさ、あのキャサリンなぁ、あれお前スペインに還してこい。」
「還してこいって言ってもねぇ、あーたそう巧くいきませんよ。第一
あーたの家のご宗旨が離婚を赦しませんよ。」
「なにぃ?家がカソリックだから駄目ぇ?坊主が赦さねぇ?ふざけんない
元々兄貴の嫁を俺に添わすんだって、戒律違反じゃねぇか!しのごの言
いやがったら、構うコタぁねぇからカソリックなんぞは、この国から追い
出しちゃえっ!」というんで。とうとうイギリス国教会というのを作っち
ゃって、カソリックと一緒にかみさん里に還しちゃって、娘のメアリーだ
けがイギリスに残りますが、こういう家庭環境に育ったものだからこのメ
アリー、絵に描いたようないじけた娘に育ちます。

さて、時は流れまして、ヘンリーの後を継いだエドワードが死にまして、
いよいよメアリーが王様になる番がやってきた!と思ったら、反対派が
何処かからジェイン・グレインなんて娘をつれてきて無理矢理即位させ
ちゃいます。かくてはならじと、メアリのほうでも策謀をしてこれを処
刑して。ようやく晴れてメアリー一世がイギリス国王に即位いたします。

さて、即位したメアリーちゃん、かねて思いを寄せていた男がございま
した。それは母方の親戚、スペイン国王フェリペ二世であります。
このフェリペ君、おブスのメアリーと不釣り合いな二枚目でございます。
まともにプロポーズしたんじゃ振られると思った、メアリーちゃん、フ
ェリペ君が頭があがらない、お父さんのローマ皇帝カール五世に説得し
てもらいます。カールさんのほうでもいろいろ政策上の都合もあるので
息子を説得いたします。
「えー、嫌だよおとっつぁん」
「なぁにが嫌なんだ。仮にもイギリスの女王じゃねぇか?」
フェリペ君、この際ブスだから嫌とも言えませんから
「だってあの国はせんはカソッリックだったけど、今プロテスタントなんて
奴らがのさばってるでしょ、僕ったら信心深いからさ、ああいうとこは
行けませんっ!」って二丁目のおかまがヒステリーおこしたような声で
断った。
さぁ、これを聞いたメアリーちゃん怒るまいことか?と言っても怒りの矛先
はこの場合惚れた男にはむかわない、全部プロテスタントにむかって、なんと
イギリス全土で数百人を処刑しまくり、ついには歴史上に「血まみれメアリー」
の異名を残し、またそれがいつの世にか転じてトマトジュースとウォッカを使っ
たカクテルの名前にもなったという、これは「ブラディ・メアリー」由来の
一席。
 
さて、1558年の明日11月17日はメアリーちゃんことメアリー一世が死んだ
日であります。どうぞ皆さん カクテルを呑みながら偲んであげて下さいな。
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by shanshando | 2005-11-16 21:36 | ■古本屋の掃苔帖


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