上々堂(shanshando)三鷹

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2005年 12月 01日

古本屋の掃苔帖 第百十八回 植草甚一

「ぼくは何か売ってない通りを歩いているときは、
ただ空気をすっているだけで、すこしも面白くないが、
繁華街を歩きながら、なにかしら買って帰ってくると、
気持がリラックスしていることを発見した。都会は、
せわしない雰囲気を感じさせてはいけない。リラック
スさせることが都会の生命なのだ。」(植草甚一「ワ
ンダーランド」)

数年前、ニューヨーク生まれのフリージャズのギタリスト
が日本のある田舎道を歩きながら、
「田舎には本当の静寂なんかありはしない。」と力説して
いた。彼はよんどころなく数週間、その地に留まらざるを
えない事に飽き飽きしていたのだ。
「本当の静寂はニューヨークや、東京のど真ん中でしか味
わえない」

私は根が田舎者だから、植草甚一やそのギタリストのような
気持ちは理解できないが、東京で人生の半分以上を過ごして
しまったので、今更田舎暮らしもできない。半端者である。
都会人でもないし、田舎にも住めない、そういう人間は結局
都会人になりきれないまま、「ふり」をして都会に住む。
植草甚一の本はそういう人間の教科書のような気がする。
自家製造した妙な問題意識や、自我などという枯れ尾花に
惑わされること無く、すいすいと消費経済の海を泳ぎ渡る
方法を教えてくれる。そういう事のための情報媒体として
彼がこの国で始めた雑誌文化の系統は脈々と今も息づき、多
くの私の同類諸君がこれを求めている。

古本屋がこんな事言っちゃ、イケないね。
すこし疲れているようだ。

植草甚一は、1979年12月2日心筋梗塞で亡くなった。
まさに江戸っ子も本場の日本橋生まれの彼は、保険ひとつ入
ってなかったらしく、残された遺族のため友人達が奔走した
らしい。
享年69歳
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by shanshando | 2005-12-01 16:24 | ■古本屋の掃苔帖


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