2005年 12月 20日
袖汚すらん田螺の海士の隙を無み 芭蕉の句である。 雛壇に供える田螺を田植え前の田で懸命にとっている 農夫の姿を海士にたとえて詠っている。 私のように田舎育ちのものでも、昭和30年代の生まれ とあっては田螺など農薬の害が怖くて、すくなくとも子ども の頃は食べた事はなかった。 東京に来てコ洒落た店で、ぬたなどにして出されたことが あるが、とくに旨いとも思わなかった。あれらは大概中国産 の輸入ものであったのだろう。国産は未だ多くが農薬の影 響下にあるだろうから。(いや、今は中国産のほうが勿論 怖いが) 魯山人は自らも好んでこの貝を食べ、かつ客にも出した という、田螺の調理に関しては料理人まかせにせず、自ら 行ったという。コツは加熱しすぎない事。 魚介に限らずすべての動物性たんぱく質は加熱しすぎな いのが旨いに違いないが、結局これが彼の命を奪う事になる。 1959年の12月に彼が食した田螺には肝硬変をおこさせる 吸虫が潜んでいたのだ。 疑問がある。先の芭蕉の句にもあるように田螺は春の季語であり 、いろんな料理の本にも春の珍味とされている。初冬ともいうべき 新暦12月中旬に田螺が摂れるのだろうか? いや、如何に寂しい晩年を送っていたとは云え、何し負う北大路 魯山人が命を的にしてまで食べたのだから、この時期の田螺 が本当は旨いに違いない。 魯山人が田螺料理を好んだ理由は、様々なジャンルに精通しなが ら、体系的な学問や修行、あるいは家柄出自というバックボーンを 持たなかった自分を田螺に譬えて見せたのであろう。 北大路魯山人は1959年の明日12月21日76歳で死んでいる。 田螺はぬたや佃煮のほかにも味噌汁にも合うらしい。寒夜熱い 田螺汁に針生姜などあしらって、酒の後に喫するのも悪くないか もしれない。くれぐれも良く加熱して、少なくともそうすれば寄生虫 の害は防げる。農薬は知らないが。
by shanshando
| 2005-12-20 16:51
| ■古本屋の掃苔帖
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