上々堂(shanshando)三鷹

shanshando.exblog.jp
ブログトップ
2006年 01月 19日

古本屋の掃苔帖 第百五十八回 ジャン・ミレー

世の中には、実は自分もそれが嫌いじゃないんだけど、
周囲に狂信的な人間がいると、なんだかしらけちゃって、
嫌気がさすということがあるもので、ゴーギャンにとって
同居人であったゴッホのミレー信仰がまさにそういう物で
あったらしい。
神は、自らの似姿とし人間を造ったというが、勿論それは
往々にして逆で、人間のほうが自らの主観的な理想像に沿
って神を都合よく造形するものである。
ゴッホにとって神に近い存在であったミレーは、ゴッホ自
身の似姿であるべきだった。
貧しく、信仰心が深く、労働を尊び、自らもすすんで労働者
の中に生きる。ゴッホにとって、自らがそれを理想としたよう
に、尊敬するミレーも間違いなくそういう人間であるべきだった。
二人が生きていた時代は重なっており、物理的には会う事が
可能なはずだったが、幸か不幸かそれは果たされなかった。
ゴッホは伝記本の中のミレーしかついに知らなかった。そして
それを信仰した。
現実のミレーは、農村であるバルビゾン村に居住していたもの
の画家仲間以外とは付き合わず、近所の百姓家を訪ねる事も
無く、教会には冠婚葬祭以外では出掛けなかったし、労働に至
っては自分の家の庭木の世話をする程度だったらしい。
また、確かに評価が高まった晩年以外は貧乏だったらしいが、
それでもゴッホほどは貧乏でも孤独でもなかった。
ゴッホがもしのこのこ会いに行っていたら、多分彼自身ひどく
傷ついただろうし、ミレーにとっても迷惑だっただろう。
神は敬して遠ざくべきなのだ。

ジャン・ミレーは1875年の明日、1月20日バルビゾン村で亡
くなった。
享年60歳
[PR]

by shanshando | 2006-01-19 13:54 | ■古本屋の掃苔帖


<< 岡崎武志さんの奥様の手作り文庫カバー      古本屋の掃苔帖 第百五十七回 星一 >>