上々堂(shanshando)三鷹

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2006年 02月 13日

古本屋の掃苔帖 第百八十回 山本周五郎

「私はつねづね各社の編集部や読者や批評家諸氏から、過分な
『賞』を頂いている。」
山本周五郎の直木賞辞退の弁である。
意地悪な読み方をすれば、「そんなもの貰わなくても、俺は充分
売れてるよ」と言っているように聞こえる。
まさか彼の本名が「清水三十六」(しみずさとむ)なので、自分
より「一」少ない「直木三十五」の賞なんておかしくて貰えない
なんて云う訳ではなかろう。と、昨日からこれが云いたくてたま
らなかった。……ああしょうもない。

とにかく、このくらいいろんな文学賞を蹴り続けた人も珍しい。
権威、権力というものを嫌っていたせいだといわれるが、それな
ら自分の名前が冠された賞など創られるのは、迷惑だったのでは
ないか?
もっとも山本周五郎賞は、SFや推理小説に冷淡な直木賞にくらべて
内容重視で偏見が少ないという意見もあり、そのへんに大衆小説の
匠ともいうべき山本の人柄が現れていると云えなくもなかろう。

その仕事ぶりは念の入ったもので、メモの段階でストーリーは充分
に練り上がっており、紙に筆を下ろす時には作品は8割がた完成し
ていたと云われる。

前述した本名「清水三十六」が「山本周五郎」になった経緯につい
ては、いくつか説があるようだが、ようするに恩人であるかつての
雇用主、山本周五郎質店の主の名前を報恩のためにつけたという事
である。いかにも人情話の名手らしい逸話である。

山本周五郎の作品は、時代を経て今もまた新しい読者を獲得しつづ
け、それが終わる事はないだろうと云われている。読者の関心や価
値観の変遷に左右されやすい大衆小説としては希有な存在というべ
きだろう。

山本周五郎は1966年の明日、2月14日肝炎と心臓衰弱が原因で死亡
している。永年、執筆しながら生のウィスキーをあおる習慣があり、
それが災いしたのである。
享年63歳
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by shanshando | 2006-02-13 14:57 | ■古本屋の掃苔帖


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