上々堂(shanshando)三鷹

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2006年 02月 14日

古本屋の掃苔帖 第百八十一回 R・P・ファインマン

実を申せば私は数学や物理が大好きである。今度生まれてきたら
是非ともそのどちらかの研究者になりたいと真剣に祈るほどに!
ただ、どういうわけか学生時代の私の成績はひどいものだった。
きっと、私が物理学者として偉大な功績を残すのを阻止したい秘密
結社が存在して、私が授業を受けようとすると眠くなるような妨害電波
を送っていたに違いない。
彼らの陰謀さえなければ、私は今頃中央線で紙魚稼業などやってお
らずM・I・Tに居たことだろう。人類の発展のために残念に思う。

さて、R・P・ファインマン氏の「ご冗談でしょう、ファインマンさん」を読
んでいない方がいたら是非読まれることをお奨めする。
学生時代、私と同じく秘密結社の陰謀に悩まされた方でも大丈夫。
バカ受け確実である。
一般に、数学者や物理学者の書いたエッセイや自伝は文科系の学者
のものより面白いが、これはその中でも飛びぬけて面白い。
気に入っている一章を要約してご紹介しよう。

少年時代、ファインマン氏はイタリア語のラジオ放送を聴くのが好きだ
った。ただし、ユダヤ系アメリカ人の彼にはイタリア語は皆目判らない、
ただイタリア語の巻舌音がおもしろかったのだ。毎日、意味がさっぱり
わからないままイタリア語のホームドラマなど聴いていた彼は、やがて
でたらめにそれを真似するようになり、遂にはでたらめのまま、街でイ
タリア人に話しかけたりするようになる。おかしいのは、結構会話が成
立したということだ。
さて、ある日父親のかわりに、歳の離れた妹のガールスカウトの会に
出席した彼は余興をもとめられ、舞台にあがり詩を朗読すると言い、
こう付け加えた。「英語でなくて残念ですが、」
「ア タッツォ ラント  ポイツィ ディパレ 、タント サッカ トゥルナ
ティ、 ナ プッタ トゥッチ、プッテイ ティラ。…………」
この調子で三節か四節、感情たっぷりにかました。少女たちは腹を抱
えて大笑い。しかし大人たちは会が終わったあと大論争、ある人は、
あれはイタリア語だと主張し、別な人はラテン語に違いないと云う。
真相を尋ねられた彼は「あの少女たちに聞いてください、彼女たちは
すぐにわかったようですから」

1943年から45年にかけて、彼は原爆開発のマンハッタン計画に参
加させられる、この事は彼の心と身体をボロボロにしたが、反比例し
て彼の学者としての知名度は上がって、各大学が彼を高給で迎えよ
うとし、そのことが更に彼を苦しめた。そしてある日彼は決意する、
「自分は遊びながら物理の研究をやっていこう。」そして、実際に遊び
の延長でノーベル物理学賞を受賞しちゃうのだ。カッコイイー

彼に関しては、面白い逸話が目白押しなのだが、あとは本を読んで
いただく事にして、もうひとつだけ、
第二次大戦終戦後、ドイツ駐留軍の人員不足に悩まされた陸軍は
彼に言わせれば、「桶の底でもさらうように」徴兵をしたが、この検査
で彼は不適格とされている。「精神に異常有り」とされたのだ。

おそらく人類史上一番おもしろい科学者リチャード・P・ファインマンは
1988年の明日、2月15日に癌で死んでいる。
享年69歳
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by shanshando | 2006-02-14 17:43 | ■古本屋の掃苔帖


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