上々堂(shanshando)三鷹

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2006年 03月 11日

古本屋の掃苔帖 第二百二回 エイサ・キャンドラー

エイサ・キャンドラーが生まれた1851年、彼の人生に間接的な
影響を与えた法律の火種が、アメリカ メーン洲で生まれている。
禁酒法である。はじめピューリタンの影響で州法として制定され
たこの法律はやがて第一次世界大戦中の穀物不足のあおりを受け
全米に広がり、1920年には正式に全米で施行された。

エイサ・キャンドラーは、コカ・コーラの創業者である(ただし
発明者ではない、発明者はジョン・S・ペンバートンという薬剤師)
なぜコカ・コーラの創業者の人生に禁酒法が関係するかというと、
ジョージア洲アトランタで生れ、のちに世界を席巻するこの飲料は、
初期には酒の代用として広がったからである。

有名な話だが、初期のコカ・コーラは成分にコカインを含んでいた。
コカインは当時まだ合法で、中毒や禁断症状に関しても問題にされ
ていなかった。前述の発明者ペンバートンがこれを創る段階の話は
また後日書くが、兎に角キャンドラーがこの飲み物の製法を買い取
った段階では、立派に「よく効く」飲み物だったのだ。
コカインというのは、私は知らないが非常に身体と意識を覚醒させる
らしい。アメリカ南部の農園では主人が奴隷にこれを食事がわりに与
えていたということも聞く。
なにしろ、教会や州政府に酒を飲んじゃいけないなんて野暮な事を云
われて、みんな腐りきっていた処にこういう有り難い飲み物ができた
というんで、瞬く間に全米で俺もコカ・コーラ我もコカ・コーラと大
人気、中には原液を決められた4倍の濃度で売る店も出てきたりして、
そうなるとこれは必然的にやがてコカインの中毒症状が明るみに出る
事になる。
中には毎日これを10数杯飲み続けていた少年がやめた途端に重度の禁
断症状に陥った事例などもあり、当然コカ・コーラ社は世間の非難を受
け、社長のエイサ・キャンドラーは原料からコカイン成分の除去を命じ
ざるを得なかった。ただコカの葉を全く用いないとコカ・コーラと云う
商標と矛盾が起きるのでコカの葉から99.99%のコカイン成分を除く事に
したらしい。らしいというのはコカ・コーラの原料に関しては未だに7x
という表現で秘密にされているからだが、ということは我々は原料の不
明確なものを飲まされている事になるが、厚生省がこれに苦情を言った
という事は聞いた事がない。とにかくどうやら今でも少ーしだけは入っ
ているらしい、コカインが。
さて、殆どのコカイン成分を除去したコカ・コーラだが、まさか「もう
抜きましたから安心です」とは宣伝できない。すれば以前は使ってたと
云う事を告白することになる。色々口を濁して最後にはついに「コカ・
コーラは嘗て一度もコカインなど使用した事はない」と開き直ったとか。

とにかくこの騒動で大打撃をうけたキャンドラーは、巨額の費用を投じ
た広告戦略で失地を回復した。独特のビンの形からサンタクロースの衣
装にいたるまで様々な逸話があるが、興味のある方はマーク・ペンダグ
ラスト著「コカ・コーラ帝国の興亡 / 100年の商魂と生き残り戦略」を
読んでみて下さい。

コカ・コーラ創業者エイサ・キャンドラーは1929年の明日、3月12日
77歳で死んで、その4年後の1933年禁酒法は廃止されている。
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by shanshando | 2006-03-11 22:02 | ■古本屋の掃苔帖


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