上々堂(shanshando)三鷹

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2006年 03月 16日

古本屋の掃苔帖 第二百六回 安井かずみ

歌謡曲というものは、なんだか甘ーいケーキみたいで。大の男が
キャピキャピ反応するのは恥ずかしいけれど、誰も見てなければ
ちょっとクリームを嘗めてみたりして顔をほころばせたりする物
なのだ。

私はどうやら稀に見る絶望的な音痴であるらしく、人に言わせる
と「わざと外しているとしか思えない」というほどの堂々たるも
のなのだけど、迷惑な事に酔うとやたら歌いたがる。
演歌も好きだし、沖縄民謡やフォークソングも好きだが、やはり
最近は1970年代の歌謡曲がいい。
つまり、ジュリーや南沙織、西城秀樹だとかそういう人たちがア
イドルだった時代の歌である。
酔いにまぎれて羞恥心をかなぐり捨てて歌うと、時に涙がこぼれて
くる。別に音痴の害毒で自家中毒をおこして苦しんでいるわけで
はない。セーシュンの苦い記憶に思いを馳せカタルシスに酔い痴
れるのだ。あーあ恥ずかし。
歌詞本を繰っては、記憶に残っているタイトルがあると、歌えも
しないくせにやたらマイクを握りたがる。その歌詞は不思議と阿
木曜子だとか安井かずみのものが多い。
実際その曲が流行っていた頃は、さも軽蔑したかのように横目で
睨んでいた歌たちである。
1960年生れの私には。その歌たちが流行っていた頃がちょうど
ティーンエイジで、5歳うえの姉たちが聞いていたなかにしれいの
歌は大人過ぎて良く判っていなかった。

安井かずみは阿木曜子より作るものにはばがあって、「わたしの
城下町」も作れば、「危険な二人」も作り、となりのミヨちゃん
の歌も作っていたりする。職人なのだ。
文化学院の学生時代から作り始めて、30数年のうちにJASRACに
登録されている歌だけで1000曲を越すらしい。「雪が降る」や
「ドナ・ドナ」などの訳詩もそうだとか、うーん稼いだんだろーね。

今、古本の世界では彼女のエッセイ集が人気がある。宇野亜喜良の
絵がついてる本などはすぐ売れちゃう。
1994年のダ・ヴィンチ10月号の表紙は彼女が飾っており、「ガン
関係ないね」という標題がついているが実際その号が出た時には彼
女はこの世にいなかったはずである。
その年の3月17日に肺癌で55歳の早すぎる人生の終焉を迎えたので
ある。
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by shanshando | 2006-03-16 18:14 | ■古本屋の掃苔帖


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