上々堂(shanshando)三鷹

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2006年 03月 18日

古本屋の掃苔帖 第二百八回 南都雄二

上方漫才の夫婦コンビは離婚しても仕事はそれまで通りという
パターンが多いが、蝶々・雄二がその先駆けではないか?
離婚の「先駆け」というのも変だが、大抵の場合原因は男の浮
気であり、女性が我慢する事になる。上方男は顔がヘチャムク
レでも弁が立ち,こまごまと気がつくので中々もててしまう。
まるでそれこそ「夫婦善哉」の維康柳吉だ。

関西の男が全部色事師であるかのように書くと苦情がくるが、
女をひっかけて泣かそうなどという悪辣な底意があってするの
ではなく、生まれながらの「しょう」のようなものに突き動か
され「気がつくと口説いていた」という男は少なくないようで
ある。それも、「コレはまずいだろう」というような関係・シ
チュエーションの場合にかぎって「しょう」が堪えてくれなく
なるのだ。
「ああ、今この子に手ぇ出したらいかんな、我慢せんといかん
なぁ。」そんな事を頭では判っているのだけれど、関西の男の
場合口が脊椎反射で動いている場合が多いので、頭は「いかん
なぁ」と思っていても口は関係なく「僕と共鳴せえへんか」な
んて事を言っていてしまったりするのだ。

南都雄二の場合、商売の漫才の上で女房は師匠で台本作者で花
形で、つまりは殆ど「オンブにだっこ」の状態であったわけだ
から、裏切りはすなわち「飯の食い上げ」になる可能性を充分
すぎるほど意味していた。なのに、イヤつまりだからこそ若い
頃から浮気の蟲をおさえかねた。幸いというべきか、女房の蝶
々には一般人とことなる芸人の常識が染み付いており、男は浮
気をするもので、それはすなわち「芸のこやし」であると思っ
ていたので、少々の浮気には目をつむった。どころか一緒に名
古屋の中村遊郭にあがった事もあるという。まぁ男にとっては
願ってもない都合のいい女房である。
ところがそんな二人でもやはり遂に破局はやってくるのである。
雄二が外に子供をこしらえてしまうのだ。子供の頃から家庭的
に恵まれなかった蝶々は、子供に憂き目を味あわせる事だけは
したくなかった。
「しょうがない、別れましょ」
「それであの商売は…?」恐る恐るお伺いをたてる雄二に蝶々は
「商売は続けるっ!」
昭和37年、蝶々42歳、雄二37歳の年である。

こう書いて来ると随分あっさりと別れたように思えるが、実の処
煮え湯を飲まされた蝶々は面白いわけがなく、相当辛い思いをした
事をその著書に書いているが、実は蝶々のほうにも若い頃に前夫
三遊亭柳枝をその前妻から奪った過去があり、因果がめぐってきた
と思わざるを得ない状況もあったのだ。そうして、やはり女癖の悪
かった柳枝から逃げ出す時に手と手を取り合ったのが南都雄二であ
ったのだ。

別れて10年のうちには、結構別れた亭主の家庭とも親戚づきあいす
るようになっていた蝶々は、雄二に結婚していた時とは違う愛情を
感じ。二人はともに人気番組「夫婦善哉」に出演し続けていたが、
昭和47年雄二は43歳のころから患っていた糖尿病が悪化、ガリガ
リに痩せ細り遂に入院生活にはいる事になる。その頃には後妻との
中が冷え始めていた雄二の世話を蝶々は甲斐甲斐しく看続ける。ま
るで、若い頃ヒロポン中毒に陥った蝶々の面倒を献身的に看続けた
雄二に借りを返すように、イヤまた元の夫婦に戻ったように。
しかし、看病の甲斐なく南都雄二は昭和48年の明日、3月19日他界
する。享年48歳であった。
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by shanshando | 2006-03-18 21:27 | ■古本屋の掃苔帖


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