上々堂(shanshando)三鷹

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2006年 03月 24日

古本屋の掃苔帖 第二百十三回 辰野金吾

今また話題になっている東京駅の丸の内駅舎を設計したのが
辰野金吾である。今度、大東亜戦争の戦災で壊れた部分を直し
て元の三階建てを復元するらしい。完成予想図をネットでみる
と後ろにニョッキリ八重洲側のツィンタワーが見えて奇観とい
うより、やはり滑稽だ。
しかし、まぁ良かろうと思う。文明というのはそれ自体が人類
が罹った壮大な病であり、病と云うのは醜さを露呈するものだ
し、醜いがゆえに愛おしいものだ。

御歳92歳になる煉瓦作りの建物は、現代の目でみればアンティ
ークでノスタルジーを掻き立てるのかもしれないが、建った当
初は随分と醜い物であったに違いない。なにしろ風土や文明の
系流を一切無視して、外国の物真似で建てたのだから、それを
美しいと感じた奴は当時としてもよっぽど物を見る目のなかっ
た奴に違いない。それが時代を経れば大枚の金を使ってまで残
したい文明の遺物となるのだから、人間の感性なんて怪しいも
のである。

何かの本で、荒木経維が古い木造住宅の窓がアルミサッシに変
わっているのを見て、それがいいんだということを書いていた
がまさにそうだと思う。それはまさに文明と云う病に包まれな
がらも人間が健全に生きている証である。
旧上野図書館は今グラスウォールとアルミで梱包されて、国際
子ども図書館として使われているが、銀紙で老人の陰茎を覆い
込むようなあの気持ち悪さこそ現代の生活感であり、とても正
しいのだ。初めにあれを建てた奴はどう思うかは別にして。

とにかく、二本のタワーでつっかい棒をするようにして、辰野
金吾の東京駅は再現される、めでたい限りである。
金余り、金余りと云われながら、政治家が馬鹿なおかげで、冨
の分配が行われない日本はこれから又貧富の差の大きな時代を
迎える。金を持ってる奴は、どんどんやりたい放題でへんな建
物をいっぱい建てて、貧乏人の群れがそれらを汚損、陵辱して
いって、百年も経てば日本はパラダイスだ。

殆ど辰野金吾に触れないままだが、とにかく妻木頼黄とはりあい
ながら明治大正時代の建築界のドンであった設計家辰野金吾は、
1919年の明日3月25日悪性の肺炎のため死去している。
享年65歳
その三年後に起きた関東大震災で多くのビルが倒壊するなか、辰
野の東京駅は軽微な損傷を受けたのみであった。
息子は仏文学者辰野隆である。
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by shanshando | 2006-03-24 22:13 | ■古本屋の掃苔帖


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