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上々堂(shanshando)三鷹

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2006年 05月 07日

いることといないこと

2006年5月7日日曜日 雨


白い空から、糸のような細い雨が降っています。
明日のことは明日考えることにして、ひとまずは日曜日を満喫してください。
お元気ですか。


わたくしごとで恐縮ですが、本屋を営んでいた祖父が他界しました。
死も日常のつづきなのだと思えるおだやかさでした。
死について、なにか急激な変化だとか、事件のあわただしさを
想像していたわたしは、あまりのおだやかさに確かめたくなりました。
祖父の耳元へ。
おじいちゃん、ご臨終です、って今言われたみたいだけど、
ほんとにちゃんとわかってますか。


からだはそこにあって、わたしはそのからだが祖父だと知っている。
でもそのからだに祖父はいない、らしい。
そのからだをずっと祖父だと思って会いに行ったり、
手をにぎったりしていたけれど、祖父はもうそこにはいない、らしい。
じゃあ、そこにいた祖父はどこに行ってしまったんだろう?


死ぬって不思議だとこどものように思いました。
そして死ぬことが少しこわくなくなりました。


ながく俳句をやっていた祖父の書斎を久しぶりにのぞくと、
古書価のつきそうな本のまったくない棚でした。
古い俳句雑誌や、おそらく献呈された自費出版の句集ばかりずらっと。
ちょっと笑ってしまった。


本日の上々堂、お客さまはまだ数えるほどしかいらっしゃって
いません。雨は夜までつづくのでしょう。
わたしはここにいて、本としずかな話をする。

by shanshando | 2006-05-07 16:15


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