2006年 06月 06日
物を考えるために散歩をするという人は多いかもしれない。 左右の足を交互に地形に沿わせて運ぶという行為は単純 で且つ、目を通じて脳に程よい刺激を与えるので、思索す るには好都合なのだ。 たまに歩くことと、考えることが同時にできない。転んでしま う。という素晴らしい資質を持った人もいるが、だいたいの人 は何か単純な行為をしながらのほうが集中して思索にふけ る事ができる。 トイレで排泄しながら考えるという事は人にも聞き、私自身も するが、どちらかというと脱糞思考は左脳系のような気がする。 空間の閉鎖性に関係があるかもしれない。借金の言い訳、 仕事の段取りなど考えるのには、トイレがむくようである。 最近、歩きながら考える文学を最近読んだ。 保坂和志の「季節の記憶」である。 この児童文学のように優しい語り口の小説は、無理なく読み手 を哲学的な思考に誘う。語り手である父親とその幼い息子、向 かいの家に住む若い女性の三人が毎朝散歩する鎌倉・稲村ガ 崎の山と海が接近した土地は、嘗て哲学者西田幾多郎が愛し た散歩道でもある。 西田の散歩コースとしては京都の哲学の道が有名であるが、 中年になって彼を次々に襲った不幸が、漸く癒されたのは晩年 に移り住んだこの鎌倉・稲村ガ崎の地であったという。 明日、6月7日は1945年昭和20年に尿毒症で他界した西田 幾多郎の61年めの命日である。 享年75歳。
by shanshando
| 2006-06-06 16:38
| ■古本屋の掃苔帖
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