上々堂(shanshando)三鷹

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2006年 07月 04日

古本屋の掃苔帖 第二百七十回 中村伸郎

人がごったがえす渋谷の街が苦手で、出来るだけ用事があっても
出かけない私だが、それでも東京に来て四半世紀、一時期は毎月
最低でも一回はかの地に足を運んだ時期がある。
山手教会の地下に2000年まであった「ジャン・ジャン」にでかける
為である。目的は勿論観客としてという事もあったが、多くは自らが
関わっていた興行の情報宣伝のためである。
当時東京で音楽や舞台芸術に関わるものにとって、ここで行われる
プログラムは、出かけないまでも情報誌等でチェックせずにはおられ
ないものであった。
今、ネット上でかつてのプログラムが公開され、胸がときめく往年の
ライブの思い出をたどる事ができる。
試みに1975年6月のプログラムに登場している名前を挙げてみよう
桃山晴衣、中山ラビ、弘田三枝子、つのだひろ、ソンコ・マージュ、
三上寛、カルメンマキとオズ、みなみらんぼう、美輪明宏、高橋竹山

中村伸郎はここで1972年から毎週金曜日イヨネスコの「授業」をな
んと11年間に亘って演じ続けた伝説の俳優である。
「喜びの琴」上演中止事件で三島由紀夫と行動を共にし、その後数々
の劇団を渡り歩いた。映画でも伊丹十三作品などで演じた飄逸な役柄
が印象的だった。

死因を調べたのだが判らなかった。
1985年の「徹子の部屋」に出演した時のタイトルが「脳血栓を克服」と
なっているが、死亡したのはそれから6年後で、それが関係あるのか
どうかは疑問である。
ただ、大酒呑みだったということは聞いた事がある。
毎日晩酌をして、自宅の二階の寝室に上がろうとして階段がまっすぐに
見えていると、あわてて引き返して飲み足したとか…。
私のような酒飲みは、こういう豪快な先輩の話を聞くと嬉しくなる。
立川談志が、金原亭馬生、志ん朝兄弟がけっこうな酒飲みだったことを
さして、「大酒食らっても長生き出来るという見本を傍で見てたから…」と
書いていたが、実際にこの兄弟は当世的には早死にの部類に入るから、
偶々大酒飲んで、長生きした人がいたからと言って自分も免罪符を得た
ような気持ちになっていると大間違いなのだが、どうもこればっかりはや
められない。
死の床にあっても酒を欲しがった志ん生、身体に悪いと知りながら大飯
を喰らわずにはいられなかった色川武大。どうせ命がけで続ける悪癖な
ら、ケチなこと言わず浴びてやれと思うのだが、なかなかにその度胸も
なく、一週間に数度休肝日を設けてしまういさぎの悪い古本屋なのである。

明日、7月5日は俳優中村伸郎の15年目の命日にあたる。
享年83歳
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by shanshando | 2006-07-04 14:25 | ■古本屋の掃苔帖


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