上々堂(shanshando)三鷹

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2006年 08月 04日

古本屋の掃苔帖 第二百八十六回 マリリン・モンロー

自殺なのか事故なのか謀殺なのかは不明であるにせよ。
結局、マリリン・モンローをあの世へ連れていったバルビツール
酸系の催眠剤について調べてみようと検索してみたところ、
南条あやという女性のHPを見つけた。
リストカッターで、薬物マニアで、20才を前に自殺した。
HPは、生前立ち上げたものを関係者が管理しているらしい。
「服用薬」というコーナーでは、彼女自身が実に楽しそうに様々な
薬物に関する話題を体験談をまじえて書いている。
中には、普通の手段では絶対に手に入らない薬物を所持している
らしい記述があり、相当なマニアであったことがうかがえる。
新潮社から「卒業までは死にません」という著書も出ている。

うつ病、薬物依存、自殺願望というのは三点セットで蔓延している
らしく、政府もなんだか対策を考えている、みたいな事がこの前新
聞に書いてあって、それはもう純粋に将来の納税者が減少するの
を心配しているのだろうが。なんだか、検討されている対策の中身
が、今から見えてきそうで馬鹿馬鹿しい。というか、政府などがなん
かすると問題が余計複雑になりそうだ。

この肥大化した経済国家では、みんながそれぞれの事情のなかで
自分を持て余していて、結局理解なんかしあえない。

この前やはりネットで見た事件で、グラビアアイドルのそっくりさんを
名乗っていた風俗嬢が、自分がマスコミにデビューするのに先立っ
て、(デビューすると信じていたという)自分の住んでいる諏訪の町を
有名にしようという狙いで、放火を繰り返していたというのがあったが、
この不可解な動機も当然本人の中では明解な整合性を持っていた
のだろう。

南条あやと、放火風俗嬢、一見まったく似たところのない二人に見
えるが、至極客観的に自分のゆがみを見つめ、あえて他者にそれ
を晒すことで自己実現を果たそうとしているところが似ているといえ
なくもない。両者の世間的評価を隔てるのは、知性の差であろう。
簡単にいうと、南条あやは死んでのちもシンパを獲得するのに対し
て、放火風俗嬢は、「馬鹿」の一言で片付けられるということだ。

しかし、事の善悪を突き放して、両者の破綻を無責任に評価する時
面白いのは、断然放火風俗嬢のほうである。南条あやの破綻はきわ
めて言語的だが、放火風俗嬢は言語を超越している。素敵だ!

さて、ようやくマリリン・モンローにかえるわけだが、マリリン・モンロー
という現象を今評伝のなかに辿る時、私は「アルジャーノンに花束を」
を思い出す。彼女が一番幸福だったのは、グラビアアイドルからの
飛躍をめざして、最初の夫を捨て、ハリウッドに向かった時ではなかっ
たか?自分の可能性に絶対の自信をもち、暗い生い立ちや過去を振り
捨てた瞬間の彼女はまさに羽化登仙の思いだっただろう。
それからの彼女は、芽の出ない下積みからセックスシンボルの時代、
リー・ストラスバーグによる演技派への転身の時代にたどり着くのだが、
私は一番よくなかったのは実はこのリー・ストラスバーグとの出会いで
はないかと思う。
彼によって彼女は自我という余計な観念を植えつけられる。
勿論世間的には、この時代以降こそが映画女優マリリン・モンローの
絶頂期ということになるのだろうが、人間ノーマ・ジーンとしては、悲劇
的な終末をむかえる坂道を転がりだしたように思う。

1962年の明日、8月5日はマリリン・モンローことノーマ・ジーンは大
量のバルビツール酸系睡眠剤を服用して死亡している。
享年36才
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by shanshando | 2006-08-04 16:25 | ■古本屋の掃苔帖


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