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上々堂(shanshando)三鷹

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2006年 09月 14日

古本屋の掃苔帖 第三百五回 ビル・エヴァンス

朝から、植草甚一のスクラップブック「ジャズ・ファンの手帖」に収められた
ビル・エヴァンスに関する文章を読んでいたら、別な植草さんのニュースが
飛び込んで来た。
手鏡を使っての覘きから、今度は本格的な接触による痴漢に発展したとい
う、ミラーマンこと植草一秀教授である。
いやぁなんというか、犯罪行為を誉めたりしてはいけないし、そんなつもりは
ないのだが、私はこの人の凋落ぶりが好きである。

早稲田をクビになった後は、名古屋の私大の先生をやっていたそうだが、こ
ういってはなんだが、学者としては完全にドサに落ちたわけであり、おまけに
そこの学生からも、好奇の目で観られていただろうし、女子学生なんかには
あからさまに気持ち悪がっていただろうから、毎日ストレスの連続で、ついに
唯一の心の安らぎである変態行為に逃げ込んだという感じだ。
そんなに好きなら、前に捕まった時、なまじ学者としてのキャリアに未練を残
さず、変態性風俗の経営者にでもなればよかったのに。

端正で学究的な容貌、冷静で閑寂とすら思える表現の裏に押さえ込まれた
人間的な弱さと、その弱さゆえに自ら進んで破滅にむかってしまう男。
ミラーマン先生の事ではない。話はすでに本題に移っている。
白人のジャズミュージシャンとしては、もっとも成功した一人であるビル・エヴ
ァンスが麻薬に依存しだしたのは、少なくとも30歳になる前からであったらし
い。はじめてマイルス・デービスのバンドに参加していた29歳の時には、すで
にヘロインに嵌っていたらしい。
マイルス自身には非常に可愛がられ、ある意味でその時期の彼の音楽に影響
を与えたとすらいわれるビル・エヴァンスだが、白人ゆえの逆差別もあって、他
のメンバーに嫌われ、孤立感を深めたことが、麻薬に嵌った原因であったらしい。
もっとも、当時のジャズメンで麻薬に手を染めなかったものなど、かえって少な
かっただろうが。

その後、自らのトリオを立ち上げ、独自のスタイルを作り上げたビル・エヴァンス
は、テクニック頼みの白人のジャズはつまらない、good technique means bad
jazz.というジンクスをくずし、ジャズ史上重要なピアニストの一人となった。

彼のテクニックの基礎は、幼い頃学ばされたクラシックピアノにあると言われるが、
実際子供の頃の彼は、体系的なレッスンを嫌い、母親が古本屋で買って来た古
楽譜の中から気にいったものだけを弾きまくったという。なまじな学校教育などよ
りは古本屋のほうが役に立つという、実証がここでもなされているというのは、ちょ
っとだけ我田引水。

明日9月15日は、やがてヘロインからコカインに転じた悪癖の末、肝硬変と潰瘍
性出血で1980年に死亡したビル・エヴァンスの命日にあたる。
享年51歳。

ところで今度こそもう社会復帰できないと絶望感に包まれているかもしれない、
植草一秀さんにエール!
がんばれ!痴漢は犯罪だけども、スケベは犯罪ではない!学者としての将来は
知らんけど、スケベとしての将来が絶たれたわけではない。希望を捨てず、社
会に容認される範囲でのスケベとして生きて下さい!それじゃ、収まらんのかもし
れんけど、人間には想像力という武器がある。頑張って貴方だけの素敵な倒錯へ
GO!だ。

by shanshando | 2006-09-14 16:23 | ■古本屋の掃苔帖


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