上々堂(shanshando)三鷹

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2006年 10月 03日

古本屋の掃苔帖 第三百十六回 レンブラント・ファン・レイン

レンブラントは、褐色白内障であったため茶色が特に明るく見え、
それが独自の画風を創りだすひとつの要因になったと言われて
いる。

色覚異常というのは、時にそうでない人には味わえない愉しみをも
たらすものだということを、十数年前ある人から聞いた。

その人がしばしば利用した文房具屋の若主人は色覚異常があり、
絵の具の注文を受けた時などは、一々ラベルの文字を確認せねば
ならないため、苦労もあったが、色の感じ方が違うことで人には味わ
えない喜びも知っていた。
たとえば、曇った日の空である。
彼がどんな種類の色覚異常であったかは判らないが、とにかくそう
でない人たちにとっては、せいぜい白と黒とグレー、よほどよく観れ
ばコバルトブルーやもうすこし薄い青ぐらいしか見えない曇天が、
彼にはオレンジ色やピンク、薔薇色、朱、濃茶、グリーンなどに彩ら
れて見える。
子供の時はそうした自分の色覚を忌まわしいものとも感じたが、環境
のせいもあったか絵を描くことが好きになり、東京に出て美大に入っ
た頃は自分の特異性を恥じる気持ちはなくなった。
むしろ、梅雨時など曇天の下俯いて歩く人達を尻目に、彼は上機嫌
で闊歩した。
やがて、卒業の時がきて進路を決める時、彼は迷わず帰郷して文具
店を継ぐことを決めた。
故郷の信州には東京の数倍も広い空があったからだ。

感性の多様さは無限に近い、絵を描いたり、詩を書いたり、歌を唄っ
たりする人のみに感性があるのではなく、黙っている多くの人の中に
も様々な感受性があるから世の中は面白い。
美醜などという概念はそれ自身あいまいなものであり、ある人に美し
く感じられたものが、別な人には醜く感じる。
事が芸術ともなれば、美醜は厳然と分かたれなければならないのだ
ろうが、ヒットラーのように自分の気に入らないものは退廃芸術として
抹殺するような奴は許せない。

さて安倍晋三が盛んに言う「美しい国」というのは、はたして誰にとっ
て「美しい」国なのだろう?

明日10月4日は、1669年心臓発作のため63歳で死んだレンブラン
トの命日である。
経済的にも破綻し、頼りにしていた家族にも先立たれ、孤独な晩年で
あったという。
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by shanshando | 2006-10-03 15:07 | ■古本屋の掃苔帖


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