上々堂(shanshando)三鷹

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2006年 11月 14日

古本屋の掃苔帖 第三百四十一回 バージニア・リー・バートン

最近こじつけが多いようである。
その日の登場人物とまったく関係のない話から、無理やりこじつけ
ている事が多い。
元々私の頭の中の人名録を充実させる目的で始めたものだから、
資料に忠実な記録こそ望ましいのだが、どうしてもやはり日記的に
その日のできごととの関連をつけたくなる。まぁご容赦を。

今日は興居島屋に嵐山光三郎さんが来店。産経新聞「東京古本屋」
の取材である。
嵐山さんにお目にかかるのは二度目で、前回のことは集英社新書
「古本買い十八番勝負」に書かれている。(私が島田雅彦に似てい
るというのは嘘ですから信用しないでください。)

嵐山さんは渋い銀鼠色のトンビにソフト帽というスタイル。
まるで昔の文士である。
「サザエさん」のはじめのほうの巻に登場する菊池寛はこんな格好
をしていたっけ。

こういうやや時代はずれのファッションは着る人を選ぶ。下手に若造
が着るとサンドイッチマンみたいになっちゃう。
嵐山さんの顔はどなたもご存知と思うが、四角張ったところに髭が蓄
えられ、まさにこのファッションとマッチしている。
髭や顔の輪郭だけでなく、クルクル動くいたずらげな目や白髪まじり
の髪までもが見事な調和をなしている。

こういう顔らしい顔というのは、最近なかなかお目にかかれない。
最近はなんでもスッキリしたものが流行りで、建物や本のデザインなど
もあっさりしたものが多いが、人為がおよばないはずの顔まであっさり
するというのはどういうもんだろう。
私は、嵐山さんの立派な顔を見ながら、バージニア・リー・バートンの
「ちいさなおうち」を想った。(オット!いきなりこじつけた!)

1940年代のアメリカというのは、大勢の素晴らしい絵本作家を排出し
た時代で、この時代の絵本の多くが今もまったく古びることなく、愛され
ている。中でも、バートンの「ちいさなおうち」は不朽の名作といって良い。
野の中に建ったちいさな家が、時代の変遷に伴って様変わりする環境
の中でやがて街に飲み込まれ、廃屋のようになっていく。バートンの
優れたデザイン力によって観る人は意識の中で家を擬人化し、やがて
最後のページで家が郊外の野原に移築されることで胸をなでおろす。
ドイツの作家イェルク・ミュラーに「町の変異」という似たようなアイデアの
作品があるが、ほかには堂々と剽窃がまかりとおる絵本の世界では珍し
いことに似たような作品が少なく、それはバートンのデザイン力があまり
にも突出しているため、恥ずかしくてマネしにくいということなのだろう。
調和のとれた良い造形というものは、いつ何時に見返しても感動をよぶ
ものだ。(なんとか、こじついたかな?)

バージニア・リー・バートンは最後の作品「せいめいのれきし」を完成させ、
1968年の明日11月15日、59歳の生涯を閉じた。

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by shanshando | 2006-11-14 15:15 | ■古本屋の掃苔帖


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