上々堂(shanshando)三鷹

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2006年 11月 28日

古本屋の掃苔帖 第三百五十回 家永三郎

私は少年時代、自分の意思とは関係なくボーイスカウトに入ら
されていた。幼稚園で団体行動が苦手と評価されて、親が余計
な教育的配慮というやつをしたのだ。結果未だに私は団体行動
が大嫌いである。
まぁ教育的配慮なんて結局そんなもので、大人が思った通りに
なんか子供は絶対育たない。

ボーイスカウトというのは、子供たちに自然と触れ合う機会をも
たせるという美辞麗句に隠された実は全体主義教育で、その発
生からして、イギリスの少年兵養成システムなのである。
現在も同じことをやっているかどうかは知らないが、当時は徹底
した精神主義的な指導が行われ、例えば真夏の行軍の折なども
決められた休息時間にしか水分補給をさせてくれなかった。
為に、倒れるような子供がいても、「昔の兵隊さんは……」という
有難い訓示を聞かせるだけで、指導者たちは自分たちの方針を
疑おうともしない。まるで帝國陸軍のミニチュアなのだ。
中でも嫌だったのが、日の丸の掲揚と「君が代」の斉唱だった。
私は、団体に溶け込めないトロイ子だったが、あいにく知力は並
程度にはあったので、この国歌と称されるわけの判らん歌の歌
詞に疑問を持ち、考えた。
一体「君」って何なんだ?
二人称の「you」では多分なくって、タイチョー達が有難がってい
るテンノーヘーカであるらしい。
「が」はたぶん「の」と一緒だろう。
「世」は世界だから、「テンノウヘーカの世界」という意味だろうけど
どーしてそういうことになるのか判らない。
そのあとの「さざれ石にこけがむす」っていうのはもっとわからな
いけど、とにかくタイチョーたちはこの歌を僕らに歌わせて、テンノ
ーヘーカを尊敬させたいのだ。
虚弱でトロイから文句も言えなかったけど、イヤ言えなかったから
こそ、僕はお腹の中でそんなインボーにはまってたまるかと思った。

今は、学校で日の丸・君が代を強制しているらしい。
日本人はすぐに右に倣えする国民だから、20年も経てば嘗てなん
の疑いもなく軍国主義からアメリカ型民主主義に乗り換えたように
全体主義を今一度この国根付かせることが出来るだろうというのが、
為政者の目論見だろうが。
どっこい、そんなチンケな目論見に乗ってたまるかい。という子供達
が多いことを信じたい。

ボーイスカウトで虐待されていた頃、こんな替え歌を唄った。
「白地に赤くサルマタ染めて、アア恥ずかしい日本の旗は~」

2002年の明日11月29日に死んだ家永三郎は、教科書裁判の印象
から左翼思想の持ち主だと思われがちだが、実際には津田左右吉に
連なる大正リベラリストの系譜で、津田は戦後天皇制擁護をした人だ
から家永も同様の思想だったと思われる。ただ学者として歴史の真実
を曲げない良心に従っただけなのだろう。
彼が32年に亘って戦った教科書裁判は、民事裁判としての最長記録
としてギネスブックに記録されている。
享年89歳
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by shanshando | 2006-11-28 18:06 | ■古本屋の掃苔帖


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