上々堂(shanshando)三鷹

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2006年 12月 07日

古本屋の掃苔帖 第三百五十四回 エルンスト・エンゲル

公園のベンチで、一人で背中丸めてお握りを食べていると、
とてつもなく悲しくなって、死にたくなります。
気の合う人達と4、5人で食べきれないくらいの量の蟹を食
べ狂っていると、自分が世界の王様になったような気持ちに
なります。
どうやら私は精神のエンゲル係数が、相当高いようです。

実際にエルンスト・エンゲルさんが提唱したエンゲルの法則
のほうは、山本益広のような人の出現によって日本では意味
を失いつつあるようですが、地球的な規模で見れば飢えと、
貧困はとても切実な問題で、何処かで食い物の事で殺しあい
すら起こっているのに、なんでこんな浮薄で惰弱な精神なんだ
ろうと情けなくなりますが、それでも私は食べる事が好きで、
喩え胃袋は満杯でも、食べ物の事を考えていると幸せで、だか
ら本も食べ物の匂いのするものが好きです。

エルンスト・エンゲルに『ベルギー労働者家族の生活費』という
著書があります。じつはまだ読んだことがないのですが、今日
のおやつのワッフルを食べながら、この本にはなにかベルギー
ワッフルに関して言及したところがあるかしら?などと想像してし
まう私は、どうしようもない資本主義の豚なのでありませうか?

岡崎さんたちと行ったベルギー旅行の終わり頃、ブリュッセルの
広場に面したカフェでワッフルを食べていた私たちのところに、
ジプシーの少女が物乞いにやって来て、同行していたT君が、
残しておいても換金できない小銭をよってやろうとしたら、彼女は
決然とした身振りで、そっちの大きな金をよこせと言いました。
あの時のT君のかっこ悪さは、貧困や飢えの実態とその問題に
無頓着な日本人の間抜けさそのものを象徴していました。
彼には、勿論悪意はなく、ちょっとした合理精神のつもりだったよう
ですが、麻薬に溺れた大人たちに使役されているという、そうした
ジプシーの子供たちの心理を、無邪気な日本の子供たちのそれ
の延長線上に考えてしまった事に間違いがあったのです。

(世界がもし100人の村だったら)
「20人は栄養がじゅうぶんではなく
  1人は死にそうなほどです
  でも15人は太り過ぎです」

精神的にも身体的にも「太り過ぎの15人」に属しそうな私たち日本人、
私たち自身が考え、そうして私たちの子供たちにも考えて貰わなけれ
ばならないことは、何でしょう?
今の教育改革では徳育が問題にされているようですが、道徳という大
人が決めたレールに沿ったモラルを押し付けることで、はたして今一番
大事な他者に対する想像力が養われるでしょうか?
前出のT君がジプシーの少女に小銭を恵もうとした行為は、「合理精神」と
「思いやり」を合体させたものでした。しかしそれは拒否された。
それは、彼には「思いやり」はあっても、ジプシーの物乞いに関する「情報」
と「想像力」が欠けていたためです。

1896年の明日、12月8日「エンゲルの法則」でおなじみのエルンスト・
エンゲルが75歳の人生を閉じています。

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by shanshando | 2006-12-07 17:38 | ■古本屋の掃苔帖


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