上々堂(shanshando)三鷹

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2006年 12月 10日

古本屋の掃苔帖 第三百五十七回 田辺茂一

田辺茂一の本は今棚に3冊。小説「すたこらさっさ」と「美女対談」
自伝「茂一ひとり歩き」、写真も一枚あるはずで、岡本太郎、尾崎
秀樹とのスリーショット。どこかのパーティーらしいが、メンバーが
メンバーだけになにやら怪しい妖気のようなものを放っている。
どうせ売り物ににしにくいから、来客の折りの茶飲み話のネタにと
っておいたら、現在ゆくえ不明。まぁそのうち出て来るでしょう。
ちなみに若干商売っけをだすと、「ひとり歩き」と「すたこら」は献呈
署名入りである。

さて田辺茂一が慶応卒業後、銀座近藤書店でわずか半日の丁稚
奉公を経験したのちに建ち上げた紀伊国屋書店は間口三間、奥
行き六間であったというから、なんだ上々堂を少し大きくしただけ
かと思ったら大間違い、こちらはそれだけの建坪に新築木造二階
建て、二階は当時まだめずらしかったギャラリースペース。
さすがボン、やらはりまんなぁ〜!
この店舗は東京大空襲で焼失。しばらくはバラック建てで営業す
るが、戦後昭和22年には前川国男の設計で新店舗を建ち上げて
いる。この店舗は自伝に写真が載せられているが、一階二階の開
口部は今なら一枚ガラスにするところだろうが、ガラスの強度上の
必要か、あるいは設計家の意匠かわからないが、おそらく一辺7、
80センチはありそうな枠が整然と並べられており、美しい。
自伝のこのくだりで田辺は、「私が書店を志した動機も、厳密に言
えば、本が好きというより、書店風景が好きなのであった。」と述懐
している。わかるなぁ〜。規模は違うけどさ〜(いじけております。)

この22年の新築から60年の時を経て、紀伊国屋書店は今も新宿の
玄関に偉容を誇っている。私は何度ここのホールで落語会を聞いた
わからない。今でこそ、書店がホールやギャラリーを併設することは
珍しくないかもしれないが、昭和の初期の開業当時からそれをやり
激動の昭和を通して、文化のパトロン的立場を貫いた。
世にできそこないのお坊ちゃんが多く、政治的野心をギラギラさせて
うっとうしいかぎりの昨今、やっぱり明治生れのお坊ちゃんはひと味違
うなぁと、認めずにはおれないのでありました。

田辺茂一は悪性リンパ腫のため、1981年の明日12月11日76歳の
人生を閉じている。

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by shanshando | 2006-12-10 15:54 | ■古本屋の掃苔帖


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