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上々堂(shanshando)三鷹

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2007年 02月 27日

百物語

標題の百物語は、一応景気付けというところです。
春先は脳が緩み加減になるせいか、まさに椿事にめぐりあうことが多いの
で、夏場よりかえってこういう話がむいていると考え、私が見聞した不思議
を百物語風に書き綴ってみようと思ったのです。はっきり云って怪異という
ほどの話ではないと本人も知っての上なので、その辺突っ込まないでね。

その壱、
 ある人に聞いた話である。
その人が子供の頃住んでいた家の浴槽にポリエステルの蓋がしてあっ
たが、その一部に毎日黒い液体がついている。
始めのうちは、天井からなにか漏れたのかと思いよくよく観察したが新築
されたばかりの白い漆喰の天井にはそれらしい痕がない。
元来、癇症の家族で、誰かが掃除を怠ったとか言うわけでもない。
ポリエステルの内に何か溶け出して滲み出る成分でもあって、そのうち修
まるに違いないと思っていたが、何年経っても一向に修まらない。
新築の時からそうなのだから、何かの動物や昆虫の尿だということも考え
にくい。
溜まっているのを見つけると綺麗に洗い流しておくが、次の日になるとまた
同じ場所に溜まっている。
母親にあれは何だろうと問うと、そんなことを気にしていてはいけないと叱
るだけで埒が明かない。
正体を見極めようと浴室で粘ったこともあったが、見ているうちは結局変化
がなく、あきらめて立ち去ると付いている。
形は勾玉の様だったり、綺麗な菱形であったり様々だったが、ある夜親戚
に危篤になったものがあって、入浴前だったが家族全員で慌てて駆けつけ
て、翌日帰宅すると、黒い溜まりはいつもより大きく広がっていて、何か文
字のようにも見えた。是非に見極めようとしていると、母親が飛んできて洗
い流してしまった。
友人はその家に18まで住んでいたが、大学入学のため上京して就職も東
京だったので、その後のことは知らないが、二十年前に河川の流れを変更
する工事のため件の家は壊され、現在別の場所に建った実家では別に何
の不思議も起らなくなったという。

その弐、
さる地方都市のスクランブル交差点で、信号待ちをしていると一番前に停まっ
たVOLVOの運転席から人が降りてきて、交差点の中央に向かって歩き出し
た。落し物を風に飛ばされでもしたかと見守っていると、交差点の中央で突然
放尿をしだした。
50過ぎの身奇麗な紳士でそんな狼藉をする人には見えないので不思議に
思っていると、こちらの車に同乗していた地元の友人がこの交差点ではよく狸
が憑くのだと云った。放尿をしたのは始めてみたがあれもたぶん狸だろうと事も
無げに云う。
幸い交通量が少なかったので、大騒ぎにはならなかったが、放尿後も一物を
さらして呆然と立ち尽くしていた紳士は、やがて駆けつけた警察官に連れ去られ、
VOLVOは路肩に寄せられたので、我々はそこを立ち去ってその後のことは判
らない。

その三、
昔なないろ文庫にいた頃、帰りに九品仏の駅のホームの二子玉川側の端に立
っていると、突然女の叫び声のような声がすることがあった。ホームには大抵
私ともう一人居るだけで、その一人はいずれの場合も男性だった。
たぶん近隣の建物からの声だろうと思っていたが、ある大雪の日に聞こえた声
はまさに私の耳元で聞こえ、驚いてふりむくとやはりホームには中年の男性が
一人いるだけだった。

その四、
甲府のディスコで行われたイベントに呼ばれて、高速バスで出掛けた時、居眠り
をしていると夢に地蔵尊がでてきて、仏に似つかわしくもないキィキィ声で、「私の
身体はまったくの無毛だがそれは、地獄の業火に焼かれながら、死児を救ってい
るせいだ」と繰り返し言う。不審に思いはしたが、なにしろ隣に座っていた男がやはり
同じイベントに出るスキンヘッドの男だったので、たぶんそれから連想した妄想だろ
うと思っていたら、その日のステージで私は火吹きに失敗して大やけどをした。

その五、
東中野に住んでいた頃、師匠(パトロン)と呼ばれる浮浪者がいた。
彼は非常に個性的な浮浪者で、着物なども自分で拾った布切れを縫い合わせて
インドの行者のような物を作って着ていたので、遠目にもすぐに見分けがついたが、
時に、晴れた日など同時に違う場所で目撃されることがあるという噂があった。
例えば誰かが、青果市場のゴミ捨て場で食糧を漁っている姿をみたその時刻に、
別の者が一キロ以上離れた小滝橋の上でいつもの服の繕いものをしている彼を見た
というような噂だ。
私は都市伝説の一種と考えて眉に唾をつけていたが、ある日神田川沿いを早稲田
通りに向かって歩いて行った彼の姿が、数秒後にまるで見当違いの日本閣の坂か
ら降りてくるのに出くわして、信じるようになった。彼が双子だったというような可能性
は低いように思う。

今日はこのくらい、また気が向いたら続きを

by shanshando | 2007-02-27 14:27 | ■原チャリ仕入れ旅■


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