2008年 07月 08日

ワンルームマンション条例

20年以上の付き合いになるnさんは、もう50をいくつか越されたはずだが、
一貫して独身主義で、東京に来て四半世紀以上どんな厳寒の冬も暖房
器具なしで過ごしている。
こんなことを書くと今流行りのワーキングプア話かと思われるかもしれないが、
nさんは決して「プア」などという安っぽい外来語で表現できるような人物ではなく、
別段お金持ちというほどのこともなさそうだが、義理事にあたってされる振る舞い
をみると、とても高々暖房器具が購入出来ないほど、困られているとは思えない。
ただ、本当に好きで風呂なしアパートに住まい、意地でも暖房器具を持たない
だけの事のようだ。
貧富というのは、何よりその人が持ち合わせている想像力の高で測るべきだ
と私は思うのだが、そういう意味で言えば、本来東京は大方の田舎に比べて
豊かな土地だと言ってよいように思う。
田舎では変わり者扱いされて生き難かった人間も、ここでは堂々と顔をあげて
生きられる。
東北の郷里に一人暮らしの老父を気遣って年に何度も帰郷されているnさんは、
しかし絶対に東京を引き揚げようとはされない。
銭湯が好きで、大勢が集まる場所に来ると微笑みを浮かべながら、静かに居て
皆が盛り上がり始める頃には人知れず消えている。

東京という町は世界的に見ても恐らく最高レベルの高家賃地帯で、それは
もうかなり昔からそうだったけど、バブル以前はそれでも安い所は探せば
いくらもあって、nさんのような静かな一人暮らしを心から愛している人に
とってはそういう安アパートは格好の棲家なのだろう。
妙におしゃれだったり、小奇麗だったりする所はかえって鬱陶しい。建物の
玄関に据えられたセキュリティーシステムは泥棒や押し売りを排除する前に
俺自身を排除している。
東京に来てやはり四半世紀で、その間20回近い引越しをしている私と違って、
nさんはようやく、止むを得ず一度だけ引っ越しただけで、5年前に引っ越した
そこも以前の所と変わらない風呂なしトイレ共同の6畳間である。
もう、今や都内でその条件の部屋を探すほうが難しいだろうに。

今朝、朝日新聞を見ていてひとつ気になった記事がある。
東京23区のうち15区で施行しているという「ワンルームマンション条例」
というやつだ。
記事の中でモデルケースとして取り上げられているのは文京区で、同区
では専用面積25平米を下回るワンルームマンションの建築を認めないと
した条例を今月から施行したという。
私はワンルームマンションなんて人間を片付けておく棚みたいなものに住
む気持ちはさらさらないが、もし今一度一人暮らしになるような事でもあれば、
昔ながらのアパートが少なくなり、銭湯が激減している昨今では、致し方なく
お世話になることもあるかもしれない。

条例の施行理由はワンルームマンションの居住者は生活のマナーが悪いと
いう苦情が、住民から多かったからだそうだが、はっきり言ってこれはマナー
に事寄せた、一種の人種隔離政策に他ならない。
ゴミだしなどのマナーに問題が起きやすいのは、マンションごとに共同のゴミ
集積場などを作らない大家の責任であって、専用面積の大きさを広くしたって、
解決する問題ではないし、昼間留守の人が多いとうのは大きなお世話だ。
素性の判らない人が出入りするのが気持ち悪いというのに至ってははっきりした
差別だといべきだろう。

要は文京区あたりの土地付き一戸建てを持っている連中が、田舎モノ化して、
「おらが村さに余所者は住まわせないだ。」とのたまっているわけだ。
大体、この「素性の判らない人が云々」という言葉はすごくおかしい。
広い土地に大きな屋敷を持っている人は素性の判る人で、一間暮らしの住人
は素性の判らない人というのはどう考えたって逆だろう。
坪数百万もする山手線環内にそんな広大な不動産を持てて、且つ維持していける
というのは、余程悪いことをしている奴に違いない。
今のご時勢でそんなことが出来るのは、汚職官吏か、贈賄企業の重役か、やくざ
か、政治家ぐらいのもんで、そんな連中は標準装備として脱税相談用の税理士を
雇っていたりする。
自らの力や知恵でまっとうな稼ぎをしている人がかえって一間暮らしだったりするのだ。

いや、勿論そんな簡単なものじゃないですけどね。
とにかく、専有面積に制限をつけて、低所得の独身者を追っ払おうとする政策って
なんだか異常な気がする。
[PR]

by shanshando | 2008-07-08 14:44 | ■原チャリ仕入れ旅■


<< かやのしほさん      シネルパ >>