上々堂(shanshando)三鷹

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2007年 01月 30日

ちのすけ 前編

古本屋をやっていると、時に珍客の訪問を受ける事がある。

こちらが知らずに応対していたら後で、実は有名な方だったと知って
はしゃいだり、という事もあるが、その程度は珍客のうちには入れない。
有名人だって文盲でもないかぎり本を読むだろうから、珍でもなければ
奇でもない。
私が云う珍客とは、せめても宇宙人クラスのことでなければならない。

8年前の8月の中頃のある夜のことである。
昼のうち、例によって仕入れに奔走し、夜はそのまま店に出ていた。
この店というのは、当然上々堂ではなく興居島屋のことである。上々堂
は未だ無い。
夕食の時、ビールを一本やって気持ちよくなり、昼間の疲れもあって帳
場でウトウトしながら座っていた私の眼前に突如、バタバタと小さな生き
物が舞い降りた。
どうやらパニック状態にあるらしく、猛烈な勢いでバタつくので、果たして
何物なのかわからない。暫く帳場の文机の上でバタついた後、転げるよ
うに床に落ち、尚もバタつきながら店中を転がり廻っている。
店内には3人のお客が居たが皆呆然として見守っている。
一体なにが起ったんだ?入り口の戸を開け放っていたので、蝉かカナブ
ンでも飛び込んだのかもしれない。夏はよくそういうことがあるのだ。
私は捕獲か、それが難しければ追い出すために立ち上がったが、凄い
勢いなので中々捗らない。
「鳥だ!」そのうち一人のお客が呟くように云った。
「風きり羽を切られて飛べないらしい。」
なるほど、飼い鳥などはよくそういう事をすると聞く、私は突然作戦を変更。
「すみませんが、暫く戸を閉めますのでお急ぎの方は先に出てください。」
そう云ったが出る人は誰もいない。みんな捕獲作戦に協力してくれようと
云うのだ。無事捕まえて保護しなければ車に轢かれるかもしれない。
私は空いたダンボール箱を二つ用意し、自分が一個持ち、もう一個を一人
の男性客に渡して、他の二人には鳥を追ってもらうことにした。
みんな協力の甲斐あって、20分後鳥は無事伏せたダンボールの中に入り、
暗くなったせいか、落ち着きを取り戻したようだ。
「よかった、とりあえずよかった」皆思わず拍手した。

函を少し持ち上げ懐中電灯で照らしてみると、雀よりまだ随分小さくて嘴と
身体の一部がオレンジ色で可愛い小鳥である。
お客の一人の女性が持っていたパン屑をやってみたが食べない。洗った
灰皿に水を注いでやってみたがこれにも近づかない。あんなにバタついて
いたのだから何処かケガをしているかもしれないが、捕まえて調べるにも
大人しく捕まえさせてくれない。時はすでに23時を越しており、お客は三々
五々帰って行き、私もとりあえず水とパン屑をそのままにして店を閉じ、家
に帰る事にした。深夜とあっては籠や餌も準備できないので明朝までその
ままにしておくしかないと判断したのだ。

翌朝、早くに店に行った私はまず鳥がまだ無事其処にいることを確認して、
店の真裏、現在「三月の羊」になっている付近の並びにあったペットショップ
を訪れてみた。ひょっとして其処から逃げたものかもしれないと思ったのだ。
店のオヤジに特徴を説明して、オタクから逃げたものではありませんか?
と聞いてみた。するとそのオヤジはこちらの眼を見ようとせずに「知りませ
ん」と答えた。
怪しい。やはりこのオヤジが売れ残りの鳥を放したのではないか?
私の疑惑が邪推でなかった事は、丁度一年後その店で同じ鳥が大量に扱
われていたことで証明されるのだが、その時は証拠もなく、またあったとして
もそんな不人情なヤツに鳥を返すわけにもいかず。私は自分でその鳥を飼
うことにした。

とは云っても経験もなく、第一その鳥がなんという鳥で何を食すのかもわか
らない。くだんのペットショップで鳥籠を誂えて、餌を購入すれば手っ取り早
いには違いないが、意地でもそんなところからは買いたくない。しょうがなく
青梅街道沿いのペットショップに出掛けて、頼りない店員からの説明で兎に
角必要なものを揃え、急いで店に戻り、ダンボールを覗いてみた。
小鳥は随分静かになっていて、それはひょっとしたら弱っているということか
もしれないと思って不安だったが、兎に角恐る恐る手で包み込んで、買って
きた籠に移した。餌も二種類と水入れも清潔なものを入れてやったが、鳥は
止まり木にとまろうとせず。籠の底で蹲っている。餌にも水にも近づかない。
私は籠を家に持ち帰り、適当と思われる場所に吊るし、図書館に出掛けた。
鳥類図鑑が丁度店になかったのだ。

図書館で調べたところによると、鳥は和名キンカ鳥 学名ゼブラフィンチ。
オーストラリア原産だが、日本でも江戸時代から飼われているという。
もう何せ8年前に読んだことなので間違って憶えているかもしれないが、
そんなことだった。たしか「小鳥の飼い方」という本もその時借りてきて、其処
に書いてあったことを忠実に守って、2,3日様子を見ていると、小鳥は二種の
餌のうち一種をついばみ始め、水も呑み、止まり木にもとまるようになってきた
なんとか、大丈夫そうだ。
夜は籠に布を掛けてやり休ませ、早朝、チチチチと鳴く声を聞くと布を取って窓
辺に掛けてやる。餌函はフッと吹くと殻が飛んでそこに新しい餌を入れてやる。
水入れは清潔が肝要だから二つ用意したものを日替わりで洗って乾燥させる。
籠そのものも二つ用意して、すくなくとも一週間に一回は替えて徹底的な清掃
をした。
彼は、捨て子から一変王子様になったのだ。
イヤ、実を云うとオスかメスかはついぞ判らなかったのだが、落語好きの私は鳥に
「錦華亭ちのすけ」という名前をつけて、オスとして育てたのだ。

後編はまたまた木曜日に、火曜はどうも話が長くなるようだ。
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by shanshando | 2007-01-30 14:21 | ■原チャリ仕入れ旅■
2007年 01月 28日

何故だろう、何故かしら

一昨日は、ちょっとビックリした。
このブログの訪問者数はいつも大体70〜90台、100に届かず
というところなのだが、一昨日それが一挙に150になった。
それも、正午時点では39ぐらいだったのが、その日の文を送信
した直後のチェックでは一挙に114になっており、そこからジワジワ
半日がかりで150まで伸びた。
理由はどうやら火曜日と木曜日、二回続きで書いた変態ばなしに
ありそうで、しかも爆発的な伸びを示した時間から察するに、多くの
人が勤務先での昼休みにアクセスしてくれたことになる。
そういえば、会社が休みの土日はアクセス数が減る。
これは自宅にパソコンが普及している台数が少ないせい、というより
わざわざ休みの日にパソコンを立ち上げてまで見る気はしないが、
会社の昼休みになら暇つぶしに見るもよし、という人が多いということ
だろう。そりゃそうだ。私も休みの日にはパソコンのモニターなんぞ見
たくもない。

いきなり、伸びた70〜80人の人達は何処から来た、どんな人達なのか?
また、ああいったケシカラン話をどういう気持ちで読んでいるのか?
こっちからは全くわからない。私の書くものは言わば垂れ流しなので、
コメントなどはめったに来ない。来れば始終反省したり、後悔したりし
なければならなくなりそうで怖いから、ちょうどいいかもしれない。
(負け惜しみでなく、ちょっとしたネット引き蘢りなのです。)
がしかし、ネタがネタだし伸び方が異常だし、今回はすごく気になる。
私が知らないところで、影のネット倫理委員会みたいな秘密組織が
動いており、こういったふざけたケシカランことを書いたヤツがいるが
やはりこういうヤツは抹殺したほうがいいのではないか?みなさんの
ご意見は?そうだそうだこんなヤツ殺してしまえ!などという事になっ
ていなければいいのだが。

また逆に、エエやんか!変態話大好きでんねん。もっとして、もっとし
て!という期待をされるのもちょっと困るのだ。
私は変態が好きだ。というかすべての人の中に潜んでいる変態的要
素が好きだし、それを隠しもせずに剥き出しにして生きているような
人達は尚好きだ。友達なんか全部、歩く恥部みたいな人達ばかりだ。
昨今、世間が変態イコール犯罪者みたいな目で見ているのがとても嫌だ。
ヒドいと思う。変態は変態、犯罪者は犯罪者である。たまに変態であって且つ
犯罪者だという人もいるが、だからといって変態イコール犯罪者という
視点はおかしい。そんなことを云えば、全ての一級設計士は偽装を
していることになるし、全ての政治家は汚職をしていることになるし、
全ての古本屋は水虫持ちだということになる。(ならないか?)

とにかく私は変態が好きで、変態に関する話題も好きだ。しかしあまり
変態のことを変態変態と云っていると、まるで私が変態のことを変態扱い
しているみたいで、変態にたいしてタイヘン悪い気がする。しかし本当は
変態の人達の中には変態扱いされて喜ぶ変態もいるわけで、そういう変態
にはやはり変態扱いしてあげるのが愛情表現というものだろう。
話がこんがらかって来た。
とにかく、当分変態関係の話題は避けよう。これは変態ブログではないの
だから、というわけで今日予定していた桂冠詩人ならぬ鶏姦詩人の話題
は書けなくなった。残念っ!
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by shanshando | 2007-01-28 15:38 | ■原チャリ仕入れ旅■
2007年 01月 27日

古本屋的でらしね

なないろ文庫と肉体労働を掛け持ちして、年中無休で働いて
いた時分、野暮用があってホノルルに一週間ばかり滞在した。

イヤかっこいい、言い方だナァ!
野暮用でホノルルに一週間!ゲーノー人みたいだ!
通常、こんなふうに野暮用という言葉を使う時は、内情は実は野暮
ではなくて、謙遜だったりするが、私の場合下世話な言い方をすると
『小指がらみ』だったのには違いないが、顛末が間抜けなので、
小指が絡もうが、薬指が曲がろうが、もうまったくの大野暮!

なにしろ仕事でも、観光でもない野暮用なので大方の時間は閑を
持て余したが、なんせ野暮用なものだから観光地などに出掛ける気
にはなれず。日がな一日ダウンタウンを徘徊したり、大学のキャンパス
を探検したりして過ごした。
さすがにワイハは温暖で、野暮用にかかずらわっていない時は実に
のびのび過ごせて、私はすっかり気に入った。
こんなところで暮らせたら!
暮らせないまでも、なんかビジネス絡みでここと東京を往復して暮らせ
ないものか?

しかし、ビジネスもなにも英語も満足に喋れないくせになにが出来る?
ある日、野暮相手から耳寄りな話を聞いた。
ハワイに滞在している日本人の間では日本語の本が取り合い状態だ
というのだ。
当時まだBOOKOFFは進出しておらず、日本の新刊を売る店はあった
が値段がバカ高い。大体文庫本一冊が1500円とかしていたように思う。
そこで、誰かが最近日本に帰国したという情報が入ると、喩えそれが友
達の友達の友達の隣の人ぐらいでも、あつかましく電話をかけ、何か日
本の新刊を持ち帰えらなかったか聞くと言う。
古本屋従業員としてはこれは耳寄り!さっそく大学の近くの日本語の本
も少し置いているという古本屋にでかけると、なるほど!日本では100均
でも売れないような文庫が800円1000円つけられて並んでいる。
これだ!こっちに永住権乃至は国籍を持っている日本人のパートーナー
を見つけ、店舗を借りてもらい。私が日本で仕入れた古本を船便で送って
売れば、大もうけとはいかなくても、生活の半分をワイハに移すことは可能
そうである!そこでさっそくパートーナー探しに取り掛かり、店舗も見つけて
日本からの輸送の手配もつけて!………いれば今頃ホノルルshanshando
なのだが。

実は私、それ以来いつもそんな妄想をしている。
いつでも、ここではないどこかに移り住むことを考えているのだ。
ソウル、パリ、ブリュッセル、アムステルダム、ヘルシンキ
仙台、大阪、新潟、京都手当たり次第に妄想の輪を広げている。
妄想だけの事業計画は資金もいらなければリスクもない。
店を2軒抱え込んで身動きとれない今日この頃の妄想はちょっとパラレルワールド!
昨日も書いたように最近は早起きをしている私は、早朝の東京は別世界だという事を
発見した。そこで考えたのが、深夜から早朝にかけてだけ営業している古本屋!
幻想的だが客はこないだろうね。
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by shanshando | 2007-01-27 13:27 | ■原チャリ仕入れ旅■
2007年 01月 26日

貧乏性

家の階段の壁が抜けかけている。
昭和40年代に建てられた安普請を格安で買取り、水周りの
引きなおしや、壁面の強化を行い住んでいるのだが、全般的
な改築ではないので云わばツギハギ、時折思わぬところに故
障が起きる。

今回抜けかけている壁は、階段と隣り合った浴室を仕切っている。
浴室は入居時、元あったスペースにユニットバスをねじ込んだもの
で、すなわち現在の浴室と元来の浴室の間に若干の隙間がある。
ユニットの天井のピットを開けて覗いてみると、抜けかけている壁と
ユニットの壁の間は約12センチ。
壁を後ろから押さえて直してしまうことは、素人仕事でもさほど難しく
ないが、出来ればこの12センチを生かしたいと考えた。
壁の厚みまで計算に入れれば、それを完全に抜いてしまった後に奥
行き12センチ程度の棚を作ることが出来そうである。
12センチといえば文庫が納まる。

商売がら、キリがないので家には極力商品を持ち込まない方針だし
何度も言うように、古本屋は個人的な蔵書ゼロが建前ではあるが、
さまざまな必要上図書館から借りた本や、一応眼を通してから売ろう
と思って持って帰ってくる本も溜りがちだから、棚が増えるのは歓迎
だが、逆に考えればそうやって余計なスペースを増やすことが気の
緩みとなり、大して必要のない本まで借りてきたり、持って帰ったり
することになるかもしれない。ここは考えどころである。

最近、就寝が何時になろうと、起床は6時と決めているので、今朝も
6時から体操をしたり、掃除をしたり、朝食のための飯を炊いたりし
ながら、この奥行き12センチのスペースのことで頭を悩ましていた。
8時過ぎて朝食を摂り、お茶を飲みながらなんとなくテレビを眺めて
いると、寺島しのぶさんという女優が出ていた。
お母さんの藤純子さんは緋牡丹シリーズのころファンであったが、
娘さんはイマイチと思っていたのに、歳を重ねていい感じになったん
だな。と感心していたら、テレビの中でインタビューに答えてこんなこ
とを言っている。
「好みのタイプはとにかく大きい人。どこがというわけではなくとにかく
大きい人」
なるほど、
世の中は何が起るかわからないので、ことによると市井の一古本屋が
こういう女優さんと恋愛に堕ちるということもないとは云えない。
いや、私自身にだってひょっとしたらあるかもしれない。
しかしながら、朝からお米の水加減を見ながら、12センチのスペースの
心配をしている私と寺島しのぶさんの間にだけは、絶対金輪際なんにも
起らないだろうな。と思った。

早起きをするとお金が儲かるかどうかは怪しいが、どうやら自分を知る
ことはできるらしい。
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by shanshando | 2007-01-26 13:40 | ■原チャリ仕入れ旅■
2007年 01月 25日

中央線はウンコ 後編

古本屋のエロ本コーナーにそれなりのノスタルジーと
いうとヘンだけど、思い入れを持ちながら何故自分の
店では置かなくなったのかというと、原因のひとつに
私自身が中途半端に老けて来たということがある。

私はどちらかと言わなくても、女性の裸に興味がある
ので、自分の仕事場にそういう扇情的なものを置くと、
どうしても気になる。気になったついでにちらほら
ページを繰ってみちゃったりする。
もう最近のあの手の本は凄くて、綺麗な女の人があん
なことしたり、こんなことされたりしている写真が満載!
結果つまり非常に疲れるのである。
もっと若ければ基礎体力があるから、それぐらいの疲労
はなんでもないだろうし、逆にもっと枯れていけば平気に
なるようだ。
事実、市場でお年寄りの古本屋さん同士がまるで句会
でも開いて、花鳥風月を愛でているかのような口調で
こんな会話を交していたのを聞いたことがある。

「○○さん、お宅のほうじゃ最近どんなぐあいです?」
「ああ、ウチは相変わらずロリと熟女ですね。」
「ほう、子供と年寄りですね。大戦末期の日本陸軍みた
 いだ。●●さんは?」
「ウチはなんと云ってもSMですね。」
「SMですか、あれは痛そうで私はどうも、××さんは?」
「ウチは、巨乳!それからデブも最近イケますね。」
「ふくよかなのは結構でゲス。□□さんじゃ、以前はよく
 ホモ雑誌を仕入れられたようですが?」
「いやぁ、前は仕入れると飛ぶように売れたんですがねぇ、
 最近めっきり売れません。みんなどうしちゃったんだろう?」
(と、淋しそうに目を細める。)
「どうしちゃったんでしょうか?」
「やっぱり、みんなで何処かに引っ越しちゃったのかなぁ…。」
昼日中、のんびりとした雰囲気でお年寄りたちがそんな話題
に話の花を咲かせて、それぞれが頭の中に東京の変態分布図
を拵えている。じつに長閑で平和な光景なのだが…

前にも書いたかもしれないが、興居島屋では初めのうちはエロ本
も置いていた。開店の時、師匠のなないろ文庫の田村さんに連れ
てもらって、神田のそういう本を扱っている問屋さんに行った時である。
田村さんは私どもの予算が限られているのを知っているから、なるだけ
卒のない仕入れをさせようと、問屋さんに聞いてくれた。
「最近はどういうのが売れてるの?」
「うーん、やっぱりロリに熟女かなぁ。お店何処に開くんだっけ?」
「西荻なんだけど。」
「ああじゃあスカトロだ!」
「ええ!スカトロ?ウチでは殆ど売れないよ!」
「世田谷はね。でも中央線はインテリが多いからね。」
(スカトロってインテリの趣味だったんだ!知らなかった!)
「ええー、世田谷だってインテリはいるよ。本当に売れるのかなぁー?」
「売れるって、間違いなし!荻窪の△さんだってスカトロが一番だって!」
「△さんが?うーん騙されたつもりで買ってみるか!?」
「騙されたつもりで買って大正解!中央線はウンコで決まりっ!」

半年後、結局スカトロは売れ残っていた。
中央線は荻窪以外インテリが少ないらしい。
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by shanshando | 2007-01-25 13:36 | ■原チャリ仕入れ旅■
2007年 01月 23日

中央線はウンコ 前編

エロ本を置いている古本屋が最近減ったように思うのだけど、
どうだろう?
たまたま私が知っている本屋さんが置いていないだけのこと
かもしれないが。一昔前は町場の古本屋は必ずと言っていい
ほど置いていたのに比べ、最近では女性客を意識してか置か
ないところが増えたような気がして、自分がやはり置いていな
いクセに、こんな事を言うのは如何なものかとも思うが、ちょっ
と淋しい気もする。

買防法施行以来、抑圧され続けた日本人の性に関する好奇心
や衝動は、世紀末を経て益々歪んだ形を進化し続けていて、
ヘンタイの皆さんにとって、こんな嬉しい時代はないだろう。

昭和天皇がお隠れになっちゃった次の日の朝、私の友人の某
が墨田公園の公衆便所に用足しに飛び込んだところ、土間に
素っ裸にされた禿げ頭のおじさんが縛られて転がされていた。
某はあまりの光景にすこしチビりながら立ち尽くしていたが、
やがておじさんの方から、
「ボーヤ、お願い助けて。」と完全無欠のオネエ言葉で懇願され
るに及んで我を取り戻し、内心関わり合いになりたくないという
気持ちを押し殺して、車に積んでいたカッターを取りに戻った。
おじさんを縛ったのはプロらしく、素人の彼には縄を切る以外に
手早く助ける方法が見つからなかったのだ。
「一体、どうしてこんな事になったの?」
切りながら某はおじけを押し隠すため、殊更強気の説教口調で
そう訊いた。
「悪い人にやられちゃったの。」おじさんはオネエ言葉に甘い陶酔
感を漂わせながらそう答えた。
放置プレイというやつだ。
某は仕事で使う車のリアウインドウに日の丸を貼っているが、実
はそれは族あがり特有のハッタリで、実態は穏健なマイホームパ
パなのだが、やはりこういう事態に出くわした以上なにか一言言わ
ねばならないと思い。
「日本中が喪に服さなければならない日に、いい歳をしてなにをや
っているんだ。恥ずかしくないのか!」とかなんとかつまらない事を
言ったらしい。可愛いやつだ。
おじさんは頬をポッと赤らめながら
「本当にそうね。非国民だわ!ボーヤ、もっと叱って!」
某はもうなにも言わなかった。真剣に恐くなってきたのだ。
やがて縄を全部切り終えると、おじさんはお尻からなにか抜き出し
ながら(詰められていたらしい。)
「ありがとうボーヤ、恩に着るわ、よかったらお名刺ちょうだい。お礼
するから。」
某はもちろん固辞して、車の中の自分の着古した作業着をやって、
あとはもう逃げるようにその場を去った。
時代がひとつの転機を迎えたそんな日にも、ヘンタイ達は元気に自
分達の文化の向上のために励んでいたのだ。偉いナァ!

話が随分長くなったが、世の中がそんな複雑怪奇な倒錯に陥る前
は、古本屋のエロ本コーナーは少年達が覗き見る性の魔境への限
られた窓のひとつだった。今やネットやテレビなどを通してどんな魔
境へも出入り自由になって、少年達もわざわざ古本屋なんぞに覗き
見しに行かなくていいようになって、古本屋からそのコーナーもなくな
りつつあるが、前段の某のようなウブな昭和少年をはぐくんだ文化が
消えつつあるのは実に残念だと、つまりそれが言いたかったのだが。
なんだか横道にそれているうちに、標題の「中央線はウンコ」に関して
書けなかった。
そこでこの話は、木曜日に続くのであった。
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by shanshando | 2007-01-23 15:27 | ■原チャリ仕入れ旅■
2007年 01月 20日

絶対音感

私は音痴である。
自慢じゃないが、そんじょそこらの音痴と一緒にしてもらっては困る。
先祖代々由緒正しい音痴の家系の正統嫡子なのだ。
私の先祖は、瀬戸内に浮かぶ興居島という島の漁民だが、
その昔、瀬戸内を荒らしまわっていた水軍がこの島に押し寄せた時
私の先祖が赤フン一丁で立ちはだかって、押し寄せてくる水軍に大漁唄
を浴びせかけたところ、水軍はパニックに陥り次々に海の藻屑と消えて
いったという、殺人マシーンのような音痴なのだ。

二十代の頃、さる劇団に所属していた時は発声練習の歌唱で
「おい、石丸!みんな真面目に稽古しているんだからふざけるのはよそうよ!」
と、注意された。わざと音を外しているというのだ。
冗談じゃない、私は稽古中にふざけるような不真面目な人間ではない。
一生懸命喉を振るわせて唄っていたのだ。第一どこが外れているかも判らない
のだから、ふざけようなどないではないか。

高校は坊主の学校だったので、芸術科目は書道だけだったが、中学までの音楽
の成績はずうっと5段階評価の1だった。
中学三年の三学期は、実技なしのペーパーテストのみで、運悪くそれで100点を
とってしまったものだから困ったのは音楽教師だ。
「石丸、本当に申し訳ないんだが、先学期まで1だった者をいきなり5にすることは
出来ないんだ。4で我慢してくれ。もう内申にも関係ないことだし。」
と頼まれ、よくわからない理屈だとは思ったが、寛大にも許してやった。

私の父の家系はそんなわけで、立派な音痴の血筋なのだが、母の家系はそうでも
なく、数十人いる従兄妹のなかには絶対音感があるものまでいる。
祖父の葬儀で一人青い顔をしているから、心配して聞いてみると
「左のサイドボーカルの坊さんが音が外れていて気持ち悪い。」というのだ。
その時は、何故そんなことで気持ち悪くなるのか理解できなかったが、先ごろその
従妹の娘が通っている音楽教室で絶対音感がありそうだと言われたそうで、
なるほど従妹の彼女自身もそうだったんだなと了解した次第である。

そう云った因果な家系の出身の母を持ったせいか、私の兄弟たちも私以外は
上手いと云わないまでも、まぁまぁ普通に唄うらしく。長男の私としては、何百年
続いた音痴の家系が途絶えてしまうのではないかと危惧している。
心配なことに昨今私自身ひょっとしたら絶対音感があるのではないかと思い当
たる事がある。
店でトイレに入っている時、スタッフが接客しているお客様がいくら位の本を買っ
てくれたかが、スタッフの声の調子や袋の音でわかるのだ。
うーん伝統はどうなる?!
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by shanshando | 2007-01-20 13:20 | ■原チャリ仕入れ旅■
2007年 01月 19日

超能力

「あの…」
「はい、いらっしゃいませ、どの本をさしあげますか?」
「いえ買い物と違いますねんけどね、さっきから机の上のトランプ
みたいなカード睨んで唸ってはりまっさかい、お腹でも痛いん違う
かと思いまして、救急車よびましょか?」
「あら、なんや見てはったんですかいな、恥ずかしいなぁ。ワタクシ
すっかり忘我の境地に入っておりました。」
「なんですか?それトランプでもないようやけど」
「これですか、これESPカードいいますねん。さっきお客さんから
買わしてもろた『君も超能力者になれる』いう本に付いてあったん
ですけど、あんまりヒマなもんやから、いっちょこれで超能力者に
商売替えできもんかと思いまして。」
「…………」

…というような会話をよく古本屋の店内で聴きますが、(聴かへんかなぁ)
忙しいお店はともかく、ヒマな古本屋は色々毒にも薬にもならん妄想を
もつものです。
事実、私自身昨今、自分が超能力者ではないかと思っているところでして、
なにを隠そう私、人とすれ違いざまにその人が飼ってるペットの種類が匂
いでわかるんです。
永年古本屋やってて、犬猫を飼われている家から来た本の匂いを嗅いで
いるうち、最近では鳥類、爬虫類の違いくらいまでは、判るようになってき
ました。
この能力なんかに使えまへんでっしゃろか?
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by shanshando | 2007-01-19 14:16 | ■原チャリ仕入れ旅■
2007年 01月 18日

おじゃまします。

出張買取りいたします。御報参上の看板を掲げている以上、
雨が降ろうと、槍が降ろうと、約束した日時には行かなければならない。
幸い槍が降ったことは今のところ無いが、雨にはしょっちゅう降られている。
本が大量にある場合は、赤帽さんに頼んで運んでもらうが、大抵の買取り
なら、愛車ジャイロで間に合ってしまう。酒屋さんが配達に使っている三輪
バイクですね。あれは実は古本屋も愛用している店が多いのだ。
大抵の場合、バイクで間に合うのに高い維持費を使って車を持つ余裕は
ない。第一私は原付免許しか持っていないのだ。

雨の日の買取りの大変さに、一時真剣に免許を取って車を持つことを考えた
が、上々堂を立ち上げる時、車での運搬をやってみて、そのあまりの機動性
の悪さにあきれ果てた。東京は車で移動する場所じゃない。
バイクなら、40分で移動できる距離が下手をすると2時間かかってしまったり
する。せっかちな私向きじゃない。

話がずれた。

雨ならとにかく台風でもないかぎり出掛けるし、体調不良の時も
立って歩けるかぎりは出掛ける。
風邪の時はお客様のほうで迷惑かとも思うが、それでも大抵マス
クをして行ってしまう。
困るのはお腹を下している時だ。
お客様の家でトイレを借りるのは、やはりまずいと思うから我慢でき
るだけ我慢するしかない。
我慢の限界を越した時は男らしく漏らしてしまうかというと、さすが
にそうもいかないので、適当な理由をつけて一度外に出て、コンビ
ニか公園を見つけて済ますのだが、中には親切というか、察しが悪
いというか中々出させてくれないお客様もいる。
「あの、ちょっと本を縛る紐を買って参りますので、一度失礼させてい
 ただきます。」
「あっ紐ね、紐ならどうぞウチのを使って下さい。」
「あのでも、紐切りも忘れて来ましたので、」
「ああ、カッターか、ハサミでよろしいですか?」
「うーん、いやエート、そうだ財布にお金を入れてくるのを忘れました。
 銀行に行って来ます。」
「ああ、お金ならウチのを…」そんな人はいないが。

とにかく訝るお客様を説得して、なんとか用をすまして帰って来る。
引き続き査定をしていると、追い打ちをかけるようにすぐまたサシコミが…。
うーん、ゆうべ食べた物にあたったかなぁ?もう銀行の手は使えないし、
エエイままよもう残りを手っ取り早く見て早々に失礼しよう。
背に腹は代えられず、猛スピードで片付けて、やれやれと思っていると、
「本屋さん、二階の本も見て下さいよ。」

とにかく、もうどうあっても堪えきれず、一度だけ正直に事情を話して
トイレをお借りしたことがあるが、こちらが云いだすと「ちょっとお待ち
下さい」と言って立たれ、5、6分で戻って来て、「どうぞ」と言われた。
トイレをわざわざ掃除していただいたのだと思うと身がすくんだ。
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by shanshando | 2007-01-18 13:26 | ■原チャリ仕入れ旅■
2007年 01月 16日

エロさんた

ある、とても寒いクリスマスイブのことです。
その歳も不景気に悩まされた可哀想な古本屋が、トボトボと
街を歩いてました。
明日はクリスマスだというのに、この可哀想な古本屋のところ
には儲け話ひとつ転がってきません。
なんとか、一発掘り出し物でも見つけて、暖かいクリスマスを
迎えたい。大好物のタラバガニを死ぬほど食べて、シーハーとか
云って、ついでにちょっと「メリークリスマス!」なんて云ってみたい。
どす黒い欲望を抱えて朝から、一心にセドリに廻っていましたが、
出てくるのはクズ本ばかりで、古本屋はもう神様を恨みたくなっ
ていました。
「ああ、世の中の人々はボーナス貰ってウハウハなのに、わたし
はなんでこんなにビンボーなの、神様のバカバカ」
借金まみれで死んじゃったルーキー新一みたいに、イヤンイヤン
をしながら歩く古本屋は、キモチ悪いので運もお客さんも遠ざかる
一方。
トボトボトボトボ歩いて、それでも店を開けなければとシャッター
の閉まった自分の店の前までやって来ると、どうしたことでしょう!
このバチあたりのヘンタイ野郎の店の前に、ダンボールが数箱と
紙袋が数袋おいてあって、その一番上のひとつには
「不用品につき、さしあげます。」と書いたメモが貼ってあるでは
ありませんか!
「さしあげます」とか「ただ」と言う言葉が、タラバガニ以上に好きな
古本屋は目の色を変えて、中味を調べてみました。
するとどうでしょう!中からは、フランス書院のエロ文庫がザック
ザック出てきたではありませんか!
「ああ有難い!世の中捨てる神あれば、拾う変態ありとはこの事だ。
いったい何処のスケベがこんなに溜め込んでやがったのだろう?」
喜び勇んだ古本屋は、さっそくエロ本の山を店に持ち込み。紐で縛
って次の日の朝市場に出品して大もうけ!
その夜はタラバガニを死ぬほど食べましたとさ。めでたし、めでたし

(以上のお話は、筆者自身の数年前の体験に基づき書かれたもの
です。ごちそうさま。)
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by shanshando | 2007-01-16 14:09 | ■原チャリ仕入れ旅■