「ほっ」と。キャンペーン

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2009年 01月 31日

わらしべ

「かんぽの宿」が色々物議をかもしているようですね。
一万円で落札した物件が六千万円で転売されていたとか。
私も簡保加入者のひとりなので、もしかしたら怒らなければいけない
ことなのかもしれませんが、「一万円→六千万円」と聞いて、怒るより
さきに
「不動産屋って儲かるんだな…」と思わずため息をついてしまいがちな、
今日この頃です。

他人様が不要になったものに新たな価値を見出して、その価値を同じように
認める人の手に渡すことによって利益を得る。ということでは我々古本屋も
同じことなわけで、私のところなんかは一枚、一冊が百円のものから扱って
いるような小商売だから、めったに大儲けなんかとは縁がありませんが、
同業のやり手さんにはやはり大変に高額なものを扱う人もいて、ゼロが
四つ以上付かないような商品は扱わないなんて人もいますが、そう言う人
だって、やはり高く売る限りは、買うのもそれなりに高く買うわけで、
まぁ正確に言うと、大変稀少だけど、需要も極端に稀少なものなどは、リスク
を鑑みて、仕入れが安くなってしまうということもありますが、そんな場合でも
利益率六千倍なんて考えられません。
大体、世間一般でもあんまりありえない話ですよね。

いやっ?ちょっと待てよ?
もっと凄い例がありました。
いや、金額はたいしたことないんですが、知り合いの古物商の話。

彼はどちらかというとあまりガツガツと商売するタイプじゃなくて、はっきり形容しちゃう
とポーっと生きている。
朝遅めにポーっと起き出して、昼近くに家から少し離れた店にポーっと出かけて、
なんとなく店を開け、客が来ても来なくてもあんまり気にする風もなく、一日好き
な音楽やなんか聴いて過ごして。日が暮れると店を閉めてポーッと家に帰る。
帰りがけに知り合いの八百屋に寄ると、彼がビンボーなのを知っている八百屋の
ご亭主は葱一本のおまけに、少し悪くなりかけの野菜をあれこれレジ袋一杯ぶんも
つけてくれる。もともと肉魚を受け付けない体質なので、あとは実家のほうから
送られてくる米と味噌があれば、とりあえず食うには困らない。そんな人だったの
ですが、
ある朝(といってももう11時過ぎ)彼が家を出たところ、近所のマンションの改築
現場から出てきた廃棄物運搬のトラックが、乱暴な運転で目の前を横切りました。
彼はめったに怒らない人なので、そんな真似をされても怒ることもなく立ち竦ん
でいると、荷台からなんだか茶色い塊を目の前に落としていきました。
「危ないなぁ、ぶつかったら怪我しちゃうじゃん。」
さすがに、そんなことを誰に言うでもなく呟いて、ふとその塊を見るとそれは錆び
た鉄筋がインスタントラーメンのように絡みあったもの。
「う~ん」
しばらく道路上に残されたそれを彼は何気なく見ていた。
初めはまぁ、こんなところ置いておくと、子供とかお年寄りなんかに危ないじゃな
いか、とか思ってたのかもしれません。
普通だと、近所のその改築現場に報せてやって撤去させたりするんでしょうが、
暇人の国から暇を宣伝しにきたような彼は、どうするでもなく暫くそれを見つめて
いて、やおら家に取って返して商売用の台車を持ってきて、その鉄筋の塊を積み
込んで、自分の店に運んだ。なんだかその塊がとっても「いい感じ」に見えたのだ
そうです。
彼の店には錆びた昔の農具の鉄なんかが飾り物として売ってたりするのだけど、
その棚の一角、それも表から一番目立つ一角にそれを鎮座させて、なんとなく
25万円の値札をつけてみたのだそうです。
勿論、なかば以上は冗談だったのでしょうけど…

なにしろ、本当に道で拾っただけの、純粋なゴミ。そんなものが売れるなんてねぇ
……。誰も思わない。
ところがその25万円の鉄屑。二週間目に売れちゃったそうです。
買ったのは30代の身奇麗な女性。
女性がそれをどういう風に使ったのかはわかりませんが、彼と彼女の想像力の
出会いが本来果てしなく無価値だった(くず鉄として売れば何円かになったのか
もしれませんが)物に一挙に25万円の価値を創った。下衆なかんぐりをすれば
その女性の側に彼に対する特別な感情があったとも考えられなくはありません。
しかしもし彼の歓心をひくための買い物だとすれば、もうすこし一般的な価値観
に則した物を買うでしょうから、これは純粋に彼の想像力と彼女の想像力がシン
クロした結果といっていいと思います。

法律的に言うと、きっとその鉄屑は拾得物ということになるから、それを転売する
には問題があるかもしれませんが、それ以前に本来の持ち主である廃棄物業者
には違法投棄、あるいは業務上の過失が認められるわけで、道路上から危険物
を撤去した彼がそれを転売することで、違法性を問う人はいないでしょう。

おなじような棚ボタ話で、儲けの倍率という意味では「かんぽの宿」以上なのに、
こちらの話にはまったく不快感はないと思うのですが…。
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by shanshando | 2009-01-31 14:06 | ■原チャリ仕入れ旅■
2009年 01月 25日

構わない 構いはしない

「構わない」は、「構いはしない」の略語だと思うのだけど、違うのだろうか?
そうだとするなら、やはり「構はない」が正しいはずだ。
地面という言葉にルビをふる時は、(じめん)と書くが本当は(ぢめん)
なのでは?
「痔」は「じ」が正しいはずで、ワープロの変換はやはり「じ」になっているが、
街角で見る「痔」関係の看板には「ぢ」と表記されていることが多い。
これはやはり「痔」→「血」→「ぢ」という連想から来た、イメージ喚起のため
の表記だろうか?
関西で「質屋」の看板を「ひちや」と書いているのは、「しの字」嫌いの
縁起担ぎだが、「痔」→「ぢ」には縁起がらみは想像しにくいから、たぶん
「ほっら!『ぢ』のほうが痛っそーやん!ね!」などと言うことを痔薬の会社の
創業者なんかがのたまって、それが定着しちゃったのかもしれない。
しかし、「痔」というのはやはり文字通り寺の病なんですね。

私は就活というやつをやったことがないので、実際には一般教養試験と
いうのを受けたことはないけど、父親が地方公務員であった関係で、
その歳に行われた採用試験の問題を中高校生のころよくやらされた。
おそらく父は私を先々公務員にしてしまうつもりでそんなことをしたのだろ
うけど、私は高得点が採れた時のお小遣いだけを目当てにやっていて、
公務員になる気はちっともなかったのだけど。やっているのは中級試験
だから、はっきり言って高校の入試問題より簡単で、中学生の頃から、
ほぼ満点をとることが出来た。
満点をとれると普段めったに小遣いをくれない父親が五千円くらいポンと
くれるのが夢のようだったけど、しかし例えば、「大童」「屡」「所以」などという
漢字が読めるということが、どのように「一般」教養で、そうした文字が偶々
読めた人が、何故公務員にむいているのか?と考えてみると、大人社会
の非合理性に首をかしげざるを得なかった。

昨年は首相の漢字の読み間違いで随分騒いだけど、べつに麻生さんの
肩をもつわけじゃないが、政治家の能力と漢字の知識はとくに関係ない
と思える。まぁ官僚のあげた書類や新聞くらい読めないと駄目だろうけれど、
国語能力のなし=首相失格というのは短絡だと思う。
豊臣秀吉の手紙だって、誤字脱字だらけじゃないか!
もし豊臣秀吉が現代の政治家だったら!!………やっぱ駄目か。

麻生さん、「大童」や「屡」は読めなくても「構はない」けど、新聞に載っている
程度の普通の日本語が読めないのは、やはり大いに「構ふ」みたいよ。
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by shanshando | 2009-01-25 12:52 | ■原チャリ仕入れ旅■
2009年 01月 24日

風説

たぶん本で読まれた方もいるかもしれないが、
私には離婚経験がある。
なんで、芸能人でもなんでもないただのオヤジのそーゆーことが
本になったりしちゃうのか?そういうのを読むと面白いのか?は
よくわからないが、文章に悪意がまるでないことはわかるので、
べつに構いはしない。、
構いはしないのではあるが、やはり以前の結婚の馴れ初めやなん
かを断りなく漏洩するというのは、別れた相手のアデランスをばら
して歩くような悪意に思えないこともないから、一応抗議したら
「因縁つけるのか!」と逆切れされて驚いた。

自分が離婚などするとは元々思っていなかったから、世間で聞く
いろんな話にも無頓着だったけど、いざ自分の身に降りかかって
みると、不和になった相手との関係もさることながら、周囲の人々
の憶測・偏見・思い込みによる新たなる不和の創出に痛めつけら
れる事になると気が付いた。
簡単にいうと、事情もよくわかってないくせに騒ぎたがる野次馬が
たくさんいて、興味本位に状況をかき回すということだが。そういう
野次馬たちをいちいち訪問して「どうか、よく知らないのに勝手な風
説は立てないでくれ」と頼むのも変だし、そんなことするとそう言う
人たちは却って喜んで別な風説の創造にいそしんでくれちゃったり
するから厄介だ。
ようするに親切ごかしのそういう連中は結局人の不幸が好きなのだ。

離婚から四年経って漸く最近では、別れた相手との間の波風は静か
になってきたと思うが、周囲で騒いでいた連中は楽しみ足りないのか、
まだ開放してくれない。
ある同業者の奥さんなど、元々さほど親しかったわけでもないが、離婚
からこっちは私が挨拶してもまるで汚いものでも見たかのように無視を
する。
無視されたって普通ならこっちには痛痒はないが、同業者となるといろ
んな場面での協力などにも差し支えるからやはり少し困る。
元を質せばお前の不徳のなすところだろうという批判も聞こえるようだが、
私に不徳があるにしても、そもそも親しくもないその奥さんに対する不徳
など思い当たりもしない。

いやいややはり世間は誹謗中傷をさえ原動力として動いているということか?
自分には縁もゆかりもない私という悪人に侮蔑の態度をとることで、その
奥さんの辛い日常が癒されるなら、これもひとつの功徳だろうか?
南無南無南無

その奥さんには最近も手ひどく無視されたばかりなので、偶々書いている
けど、そうした2ch的気分の人は女性だけではない。ある若い男性の知人
などはゴタゴタのその時分同業者の集まる場所で、声高に私の非をあげつ
らい、(よく事情を知らないくせに)「あいつに天誅を与えよう!」とまで言って
いたらしい。

天誅とはなんとも大時代で、冷たい無視よりはいくらか稚気を感じさせる言
い様で、稚気がある分毒は少ないのか、こちらはその後直接あった時は以前
と変わらずにこやかに挨拶を返してくれた。ひょっとしたら陰口が私にまで伝
わっているとは思わなかったのかもしれない。

また、離婚してまもなく再婚した私を口を尽くして悪人呼ばわりした年配の男性が
いて、この人には私は悪口も随分言われたが、ある時期は随分世話になりもし
たので、最近病んでおられると聞いて是非お見舞いに伺いたいと思っているのだが
果たせずにいる。病を得られたご当人はともかく、自分自身も三度目の結婚でその
男性の二度目の結婚の伴侶となられた奥様が私を忌み嫌っておられることを知っ
ているからだ。

とにかく、ひとつの不和は頼みもしないのにどんどん輪をひろげ、思わぬ他人
のカタルシスの種となる。私はこういう人たちを卑しいとも、愚かだとも思わない
(だって自分も似たりよったりだから) ただ、もうちょっとお手柔らかに願い
たいだけである。
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by shanshando | 2009-01-24 14:44 | ■原チャリ仕入れ旅■
2009年 01月 20日

鬼やらい

毎日活字をおっているせいか、すっかり目が悪くなってしまって
いやこれは老眼だと、眼鏡屋に行くと乱視も若干混じっていると
のことで、早速に眼鏡を拵えたのが一年前、
初めは細かい文字を読む時だけに使用したので、始終持ち歩く
必要もなかったが、最近では更に悪化したのか、わりと大きめの
文字も読みにくいから、買取でも絵本や画集なら苦労はないけど、
なかに未知の専門書などが混じる場合に備え、携行を余儀なくさ
れている。

買取は大量の場合は書斎に通されることになるが、少量なら玄関先
で済ませたほうが、お客様にとっても、伺う当方も気楽だから、御用
聞きよろしく、上がり框の前にしゃがんでさっさと片付ける。
午前中に二件三件と立て込んでいる場合は、失礼とは思いながら
バイクのヘルメットも取らない。
とくに最近新調した物は革張りのスタイリッシュなもので、ゴーグル
なども飛行機乗りのようで格好良いのだが、あご紐の着脱が面倒で
ついつい不精を決め込んでしまう。

自分では格好いいつもりで買ったヘルメットだが、これを被りゴーグル
を額に揚げ、代わりに老眼鏡をかけていると実は相当ぶきみらしい。
訪問先のペットが怖がって近づかない。家では子供も泣き出す。
そう、これは時節柄節分の鬼を思わせる。

節分の豆まきは本来宮中で年末に行った追儺式が形を変えたものだ
そうだ。金色の目玉が四つ付いた鬼の面は、元来鬼を追い払う役の
方相氏の被るもので、触穢信仰が流行した平安朝の初期に逆転した
ものらしい。

何故、平安初期に触穢信仰が流行するかというと、やはり水利の悪かっ
た平城京が疫病で滅んだせいなのだろう、やっぱり。

方相氏は葬儀にも関わり合いがあるから、伝染病などを経験して人の
死そのものを穢れと考えるようになった当時の人々にはそれに関わる
方相氏も穢れの象徴と思えたのだろう。
いや、あるいは為政者が疫病の流行に怯える世相を治めるために、方
相氏に罪を着せたのかもしれない。
今風に言うと国策逮捕?

今でも幾つかの神社では、方相氏を悪役としてではなく、魔をはらう役と
して儀式に登場させるらしい。写真でみると中国風の衣装を纏った顔の
長いヒトはたとえ目玉が四つあっても怖いというより飄逸な感じがして、
永年に亘り悪者にされてきたことが気の毒になる。

第一方相氏でなくともみんなで寄ってたかって鬼を苛める儀式はどうも
あまり気持ちのいい儀式ではない。まさかそれが虐めの発生要因にな
っているなんて思わないけど、なんだかどうも好きになれない風習だ。
ここはひとつ方相氏に本来の役目に戻ってもらって、玄関先に四つ目の
面でも飾ってみるのが良いのではないか?
もし、「そんなの作っていられないよ!」と言う方は是非とも上々堂に本を
お売りください。四つ目の鬼が喜びいさんで伺います。
虐めないでね。
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by shanshando | 2009-01-20 14:44 | ■原チャリ仕入れ旅■
2009年 01月 17日

ゲージュツ

かつてゲージュツに携わっていた立場から言わせて貰えば、
ゲージュツにはお金になるゲージュツとならないゲージュツ
がある。
え?そんなことわかってるって?
そーですよね。そう、そんなことみんな知っている。
だけど、例えばもうすこし事細かにそのへんのジョーキョーを
分析すると、お金にならないゲージュツにも、
・偶々今は不遇でお金にならないけど、いつかひょっとして
もしかしたらお金になるかもしれないゲージュツと、
・もー絶対金輪際、未来永劫、永遠不滅にお金にならない
ゲージュツ
というのがあって、そういうこともこれは少なからぬ人が了解して
いると思うけど、勿論本来ゲージュツを「金になる、ならない」で
測るのが間違っているのだから、この差を即ゲージュツ性の優劣
と捉える意見には与しかねる。

ここまでは元ゲージュツ家としてのおはなし、
それでここからは古本屋としてのおはなしなわけだけど、こちらは
もうちょっと見方が複雑になって、
・ゲージュツ性には随分と疑問も感じるけど、とにかく今お金にはなる
もの、
・かつてはそのゲージュツ性が賞揚されていて、無論お金にもなった
けど、今は只でもいらないと言われて、つまりさっぱりお金にならない

などがまずあって、それはまぁ複雑といっても、要は流行り廃りという
風に説明すれば、判りやすいと思うが、世の中複雑怪奇というか、な
んだかさっぱり説明のつかない素人には判り難い事が事実ある。

先日、午後暇屋主人はあるお家に呼ばれて、版画を数点拝見した。
古本屋の交換会には版画や絵画、軸などもよく出品されるので、
ものによってはお役に立てるかと思ったわけだ。
「お役に立てる……」などという言い方はなんだか偽善的だけど、つまり
市場で値がつきそうな物ならお預かりして、出来高から歩合で手数料を
頂戴するわけだからボランティアではない。

呼んでいただいたお宅からは以前本も売ってもらっていて、その縁もある
し、何より一人のお客様とのお付き合いが次ぎのお客様を呼ぶと言うことも
あるので、手数料自体はわずかでもなるだけこういうのは誠実に対応したい
のだ。

さて、伺う前に数点ある版画のうちでお客様のほうでこれぞ!と思われる
一点に関してはあらかじめお話を伺っていた。
その一点はなんと現代日本画壇を代表する大家中の大家、たぶん芸術院
会員(たぶんその中でもそーとー偉いさんの一人)であらせられる平山郁夫
大先生のお作!
あまりに神々しいそのお名前の前に、市井のケチな古本屋である午後暇屋
は○○玉を縮みあがらせ、オマケにすこし漏らしてしまった。
「ああ、大先生だけはなにとぞご勘弁!」
それがその時の午後暇屋の偽らざる心境である。
大先生の印刷物はあまりにもご立派すぎて、均一に出してもなかなか売れて
くれないのだ。
おそらく、あまりにビッグネームであらせられるので、皆さん恐れ多くて買って
いただけないのだろうと思う。

よもや、大先生が偉くなってからは駄作しか描かなかった横山大観などと同じ
ように、ワンパターンのしょーもない絵ばかり描いているというような事がある
わけがないから、そのゲージュツ性を疑うようなことは努々あってはならない。

しかし、とにかく大先生は鬼門だ。暗剣殺だ。
これが書籍ならふたつ返事でお断りするところだが、ものはとにかく版画である。
つったてシルクスクリーンだから何百枚も刷っているわけだけど、そういや何度
か市場でも先生の版画を見たことがあるから、どこかの酔狂な…モトイ審美眼
の備わった同業が買ってくれるかもしれない。
お客様にも調べもしないで素気無いことは言えないので、伺う前に作品の市場
価格について事前調査を行った。

結果、おそらくそれと思われる版画(題名しか聞いてなかったのでその時点では
絶対とは言えなかった。)は未だ銀座の画廊で販売していた。
刷られた数は(刷ったのが一回であるとすれば)250で、その店での売価は20万
あまり、なるほど。
普通素人だとここで安心して、売価20万なら状態が良ければその三分の一くらい
には買えるかな?などと思いがちだが、そこは伊達に15年の年月をこの業界で
無駄飯を食ってはいない午後暇屋。これはやっぱりちょっとやばそうだと考えた。

大体1970年代に刷られたものが新品で画廊に残っているのが怪しい。
幸い、そこは買取をしますとの広告も打っていたので、自店で受け入れられそうもない
場合はお客様にこの店の電話をお教えして、直接話してもらうと言うこともありえる。
そう思って、先ずは買い取る意思があるかどうかの確認だけでもしておこうと、自ら
その番号に掛けてみた。
「あの、平山大先生の『○○○』という版画ですが、お宅でお売りになっている。」
「はいはい」(非常に愛想がいい)
「買い取っては貰えますか?」
(途端に態度が変わって)「売れもしないもの買えますかいな!ガチャン」
電話を切られてしまった。
ああ、よかった調べずにお客様に番号を教えていたら、お客様に嫌な思いをさせる
ところだった。

とにかく、平山大先生のご威光は画廊の客たちも畏縮させているとみえる。
こうなったら、しょうがいない一応他の版画も拝見したうえで、駄目だったら虚心で
実情を説明するしかない。そうおもって約束の期日に伺った。
作品はやはり間違いなく、銀座の画廊が持っているものと同じ、他も似たり寄ったり、
「………というような事情で、やはりちょっと値段は付き難いようなので、今はまだ
お持ちになっていたほうが良いと思います。」
「でも、先にいって値段がつくということがあるかしら……」
「(すっ鋭い!)そうですね。でもやはりお好きでお買い求めになったものですから、
お飾りになって楽しまれるというのがいいのではないかと……」
「そうね、でもこれ主人の昇進祝いで貰ったものなのよね。昇進するたびになんだか
こういうものを……」
亡くなられたご主人様は、銀行にお勤めだったとか…、成る程!

銀行はデパートと仲良しだから、デパートの外商部が押し付けられた…モトイ
拝領した大先生のお作を仲良しのよしみで買い取って、こういう進物に使うのか。
やっぱり、外商部も大先生の政治力に恐れをなして押し付け……いや拝領したん
だろうな。
ああ、庶民には理解しがたい御ゲージュツと金の構図がやっぱりあるのね。
午後暇屋は覗いてはならない雲上の世界を垣間見たような気がして、水ぶくれ
の身体を縮ませたのである。
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by shanshando | 2009-01-17 15:21 | ■原チャリ仕入れ旅■
2009年 01月 14日

現金輸送車 続き

ひたむきにモノを食べているデブは美しい。
世間の誰がなんと言おうと凡倉警部はそう確信していた。
特に今自分の目の前で鍋に首を突っ込まんばかりにして河豚を
食らっている水風船男の愛らしさといったらどうだろう!
警察という職場は柔道経験者が多いせいか結構肥満体の男たちが
多い。独り者の凡倉警部はそういった若い連中をよく食事に誘う。
けっして彼らのカラダが目的なのではない。(完全にそうでないとも
言えないが…)とにかくひたむきに食事をするデブの姿には下腹部から
衝きあげてくるような愛おしさを覚えるのだ。
職場ではなるだけ寡黙にして、間違っても地のオネエ言葉など出さな
いようにしている凡倉だが、そうした男たちの姿を見ると無意識のうちに
視線に湿度を含ませてしまい、我ながらハッとさせられる事になる。
……………。

「あんた、よく食うね。」
目の前の水風船に見とれながら警部はそう言った。
けっして皮肉で言ってるわけでないことは、相手にも伝わっているはずだ。
「お蔭様で、健康そのものよ。ひれ酒おかわりしてもいいかしら?」
「勿論いいけど、そろそろ事件の話もしてくれないかしら?」
「やあね、食事中に。最後のおじやが済んで、デザートを頂きながらに
しましょうよ。」
「まぁいいけど。」

30分後、てっちり5人前とてっさ5人前をほぼ一人で片付けた水風船は
丼三杯分はありそうなおじやを流し込むように食べ尽くし、デザートの
抹茶アイス大盛りを頬張りながらようやく話を始めた。
「ようするに物事を一番単純に見た時に見えてくる事が、一見どれほど
有り得ないように見えても真実に違いないということよ。」
「ふむ推理小説の常套句ね。で、この場合の一番単純な真実というのは
どういうことになるのよ?」
「やれやれ、納税するのが嫌になるような発言ね。ようするに凡ちゃんの
場合頭が悪いんじゃないのよ、物事を素直に見る習癖にかけているのよ
ね。イイワじゃあ順番に考えていきましょう。
まず、盗まれた現金だけど当然一万円札ばかりというわけじゃないでしょ?」
「そうね、朝から五軒のATMを回って、A駅前が最終だった訳だから硬貨や
千円札も随分多かったと思うわ。」
「そして、その5軒分はそれぞれ別のトランクに入っていた。」
「そうね。」
「あたしはそんな大金持ったこと無いけど、想像しても大変な量の荷物にな
るわ。もし万一警備員が荷台に鍵を掛け忘れていて、何の苦も無く盗み出せ
たにしても運ぶのは大変だわ。」
「鍵の閉め忘れは有り得ないらしいの、ロックがはずれたまま一定時間が
過ぎると大きな音でアラームが鳴って、自動的に警備会社の司令室に連絡
されるんだって。」
「当然ね、人様の大金を預かるんだから万一のミスもないように考えてい
るわよ。
で、荷物は大荷物だし、荷台のロックは鉄壁だとすれば、凡ちゃんならどう
やってこれを盗む?」
「????………もしかして?」
「もしかして?」
「もしかして、車ごと?」
「そうね、それが一番単純で簡単よ。」
「だって、車は盗まれてないわ!」
「そう見えるわね。」
「すり変えたとでも言うの?警察だって馬鹿じゃないから、被害にあった車
のナンバーは勿論車体ナンバーまで調べたから車がすりかえられてない事
は明らかよ。」
「そうでしょうね、すくなくとも警察に通報された時点で現場にあった車は本物
だったはずよ。」
「…………」
「金融機関のATMというのは大抵繁華な場所にあるわよね?」
「そりゃそうでしょ、山の中に造ったって意味無いわ」
「だから、事件現場であるA駅前のように車を少し離れた場所に停めて集金
しなければならないような場所は他にもあったはずよ。」
「本部に帰って調べないと判らないけど、確か何軒かそういう所があったわ」
「調べてごらん、朝一番に回った所がそういう場所だったはずよ。」
「だとしたらどうだっていうの?」
「判んないオンナねぇ、朝一番にまず其処で車を偽物と入れ替えて、あとは
充分集金が済んだA駅前で元の本物と再度入れ替えるのよ。」
「車にはGPSが付いているのよ!」
「あのねぇ、犯人たちはわざわざ偽物を造れる程にS警備保障の輸送車を熟知
しているのよ。GPSぐらい偽物にも同じ信号を発信するものをつけておいて、せ
えーので切り替えれば誤魔化せるわよ。」
「まさか、そこまで金とリスクを掛けて1億足らずのお金を盗むかしらねぇ~」
「馬鹿ねぇ~、目的はお金なんかであるはずがないじゃない。S警備保障の信用
失墜によって利益を得る者、それが真犯人よ。いずれにしても警備員のどちらか
が協力している可能性は充分考えられるわね。わかった?」
「うん」
「わかったら、いつまでもこんなところでアイスなんか舐めてないで警察に戻って
仕事をなさい!……あっ!お勘定は済ませておいてね!」
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by shanshando | 2009-01-14 14:00 | ■原チャリ仕入れ旅■
2009年 01月 13日

現金輸送車

初めに断っておくが、これは現実に起きたいかなる事件・犯罪とも無関係に
ヒマな古本屋が勝手な妄想を書くだけのことであるから、もし万一語られる
内容に似た事件があったとしてもそれはただの偶然であると考えて欲しい……

……とわざわざ断る事もないほど荒唐無稽な話なので、誰もそんなこと考
えないだろうけれど、もし現実に類似事件の当事者として今も苦悩されてる
方がいたら、その人を傷つけるようなことになってはいけないとの老婆心から
一応断った上で、いつもながらの暇人の寝言を書き連ねたいのである。

さて事件の概要であるが、某年某月某日の午後二時、都内のJR線A駅近く
の路上に停められたS警備保障の現金輸送車から、その日それまでに集金
された現金1億円近くが完全に施錠された輸送車内部から消えうせたという
もの。
 犯行があったと思われるその時間、警備員二名は車を停めた場所からほぼ
80メートル離れたATMで集金作業中であったが、無事作業を終えて車に戻
ってみると、輸送車後部にあるはずの現金トランクが綺麗に無くなっており、
慌てた二人はすぐに会社に連絡をとり、まもなく警察が現場に到着、即刻現場
検証と係員からの事情聴取にあたった。

停車場所と集金先のATMまでは距離こそさほど離れていないが、ATMはPの
字型になった駅前ロータリーの袋状の一角に位置し、停車場所ははPの字の
縦棒下部にあたる四車線道路に位置していたため、集金中の二人には集金
作業中に残してきた車の安全を確認することは不可能であった。
集金に要した時間は15分あまり、その間に犯人は輸送車本体には傷ひとつ
付けず、見事に一億余りの現金を盗みおおせたのだ。

現場付近は駅前ということもあって、午後のその時間は大勢の通行人やその他
の目撃者がいたにも関わらず、犯人の特定に至るような情報は誰からも得られ
なかった。
停車場所を店の中から見渡せたはずの道路脇の商店主ですら、その位置に輸
送車が停められることはあまりに日常見慣れた光景であったために、特段気に
することも無く、犯行の瞬間を見逃していたのだ。

車体に抉じ開けたような痕もなく、またそれ以外の何か特別な手段が用いられた
ことも考えにくい事から、捜査当局は当然のように係員二名がそこに至るまでに現金
を何処かに隠した可能性を考えたが、S警備保障では就業中の係員それぞれに
端末を持たせ詳細に追尾しており、二人がもし決められた行動パターン以外の行動
をとれば直ちに確認され記録された筈なのだが、残された当日の二人の記録には
一向に怪しむべき点はなく、考えてみればもし現金がそういう状態で無くなれば
第一に嫌疑がかかる筈の二人がそのような無謀なことをするとは考えにくく、ここに
至り捜査は暗礁に乗り上げることとなった。

                      ○

警視庁O署の凡倉警部が馴染みの古本屋 午後暇屋を訪れたのは事件から一ヶ月
あまりが過ぎた寒い日の夕刻だった。
午後暇屋主人はいつに変わらぬアホ面にヨダレのオマケまでつけて居眠り中で、店内
にはやはりいつに変わらぬ閑古鳥が鳴いていた。
店の前に立ち、何から何までいつも通りのその様子を確認した凡倉警部は、このところ
難事件の捜査で強張り勝ちだった頬の筋肉を緩め、古びて嫌な軋み音を立てる硝子の
引き戸をなるだけソロリと開けて店内に入り、抜き足差し足で居眠り中の小太り男に
肉薄し、
「オハヨ、朝よ。」と囁き、茹で餃子のようにボッテリとしたその耳に吐息を吹きかけた。
そこがこのオトコの性感帯だと警部はよく心得ていて、つまり二人はそういう仲なのだ。
「あっ、エエ?何々ィ~?イヤン」急に起こされた古本屋はびっくりして椅子から転げ
落ちる。これもいつもどおり。
「痛ぁい!あら凡ちゃん!またやったわね!もういっつもひっかかちゃうんだから悔し
いたらない!」
転げ落ちた拍子にぶつけた腰をさすりながら立ち上がった古本屋は水風船のように
ポヨポヨの身体をクネクネさせながら、ソップ型の警部の厚い胸倉をポンポンと叩いた。
「まぁ何時もながらにあっけないくらいに変わらないリアクションで、却って張り合いが
ないわ……。こらこらアンタあんまり気安く叩きなさんなよ、いい加減にしとかないと逮
捕しちゃうわよ。」
「あら、いいわよ。この商売も飽きちゃったし、このへんで刑務所でもいれてもらって、
強面のお兄さんたちに輪姦されるのも悪くないわ。」
「あらまぁなんてインランなのかしら!あんたなんか入れると刑務所の風紀が乱れちゃう
わね!」
「ふん、淫乱はお互い様でしょ、警視庁管内でも有名な鬼警部がこの歳まで独身なのは
仕事に熱心なせいじゃなくて、オトコ狂いのおかまだからなのよ~ってバラしてやろうか?
………それより今日はまた何の用なの?まさかその粗野な品行を改める為に読書の
習慣をつけようってわけじゃないでしょう?」
挑みかかるようなおかま独特の語尾揚げ言葉に呼応するように警部は背後に隠したケー
キの包みを黙って差し出した。

                           ○

「ふーん、新聞取ってないから知らなかったけど、最近には珍しい頭脳犯罪ねぇ~。」
水風船男はまん丸な頬っぺたを生クリームだらけにしながらそう言った。
「あら、アンタ新聞も取らないほどビンボーだったの?」
「馬鹿言わないでよ、ただこの商売やってるとね、活字中毒になっちゃうから、なるだけ
商売以外の活字は見ないようにしてんの、それに最近なんだか乱暴な事件ばかりで、
あたしごのみじゃないんだもん……」
「そりゃアンタの趣味にあわして犯罪者だってショーバイしてんじゃないわよ!でも、どう
?今回はちょっとアンタ好みでしょ?」
「そーね、パズル雑誌程度の暇つぶしにはなったわね。」
「あら、生意気ねぇ!まるでもう真相がわかったみたいじゃない。」
「真相ってのは、犯人はお前だ~ってやつでしょ。そんなのは興味もないし、どーでも
いいの。ただ犯人がどうやったのかは判るわよ~」
「えー!」
「聞かして欲しい?」
「ウン」
「あーケーキ食べちゃったら、なんだかお腹がかえってすいちゃったみたい。今夜は
冷えるから河豚鍋なんていいわね?」
「わかったわよ、河豚でも鰻でも奢るけどアンタ今に糖尿でおっ死ぬわよ」
「そーね、美人薄命っていうし、私も若死にするかもね……ホラぼやぼやしてないで、
教えて欲しかったら店じまいを手伝って!」

(明日に続く…)
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by shanshando | 2009-01-13 16:32 | ■原チャリ仕入れ旅■
2009年 01月 09日

あけましたね………ところで

どうも、真っ当な挨拶というのが苦手で、お正月嫌いにはそのせいも
あるのですが、とにかく。
あけましたようなので、おめでとうございます。

私のほうではいつも不義理ばかりなのに、懲りもせずに賀状をくれる
皆さん、本当に有難うございます。
でも、本当にもうエコロジーのためにもどうか来年からはお出しいただ
かないようにお願いします。
日本中であの無意味な習慣をやめれば、印刷や配達にかかるエネルギー
消費だけでも相当なものでしょうから少なからず温室効果ガスの排出減少
につながると思うのですが………と言うと、
「お前の不精を棚に上げて、つまらぬ理屈を言うな!」と怒られた。
「日本の大切な伝統文化をそんなことで絶やせるか!」と言うのだ。

はっきり言って、年賀状なんていうものはどう考えても郵便制度が施行された
明治中期以降の習慣でしかないはずだから、あんなもの伝統文化でもなんでも
ありません。

よくお客様で、同情かたがた
「いやぁ、いくら最近の人は本を読まなくなったとはいえ、紙文化は永遠不朽だと
思うよ。」などと仰る方がおられますが、私は紙文化なんてそんなに大事だとは
思えません。
江戸時代まで、日本は木版印刷が殆どで、書物の出版数は今より遥かに
(それこそ蟻と東京ドームぐらいの差で)少なかったはずですが、その頃のほうが
ずーっと書物は大事にされていたわけで、今はもうどーでも良いような本ばかり
を次々に造っては、次々に断裁し、その両方でエネルギーを無駄に消費してる
のだから、そんなつまらない文化はとっとと絶滅すればよいと思っています。

手始めに新聞をすべて電子化して……それでは端末を持たない人には情報が
行き渡りづらいというのなら、公共施設に自由に使える端末を配置すればいい
……書籍は印刷用紙の配給制などやると戦前みたいに言論統制に繋がるから、
一応どんな書物でも自由に印刷用紙は使えるけど、増刷に関しては上限を設ける
ようにすればいい。そうすれば!
そうすれば、きっと古本屋が儲かっちゃうじゃないか!

あああ、正月早々我田引水ですよ。
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by shanshando | 2009-01-09 14:15 | ■原チャリ仕入れ旅■