人気ブログランキング | 話題のタグを見る

上々堂(shanshando)三鷹

shanshando.exblog.jp
ブログトップ
2008年 11月 04日

均一

均一本というのは、まぁ店売りをやっている古本屋なら、大抵のところは
やっていて、中には大変とまではいかなくても、そこそこ良い掘り出しなども
あったりするから、それを専門に買い漁る小僧さんなどもでたり、またその
小僧さんが気がつくと大変売れっ子になっていたりということがあったりして、
素晴らしい豪邸を郊外に建てちゃったりして、そうなると売ってるほうの古本屋
の中には、なんで売ってるほうがアパート住まいで、買ってるほうが豪邸住まい
なんだなんて怒る人が出たりして、それはひがみというものだけど、まぁそれほど
にこの均一本は侮れないものなわけだ。
昔はこういうのは古本屋はみんな所謂ゴミという、とても値段をつけては買って
来れないけど、かといって捨てちゃうのもなんだか惜しいという本の中から選ん
でいた。

しかし、最近は不況のせいもあって、また小僧さんの活躍のお陰もあって、この
均一本がちゃんと揃ってないと、商売がうまくいかないというような事になってしま
って、心ある古本屋はみなこの品揃えに気を配るようになった。
さる均一棚が充実しているので有名な本屋さんなど、わざわざ市場で均一を
買っていたりする。
なにしろ、月間何千冊を売り上げるというこの本屋さんの売り上げの冊数比率で
ほぼ70%が均一だと聞いたことがある。
均一が良いから人が集まって、結果的に言うと他の通常価格の本も売れやすくなる
という理屈で、だから激戦区の中央線ではそれぞれに店主が工夫を凝らして、
均一を集める努力をしている。気楽にはいって来るのを待ってるだけでは、追いつか
ないのだ。

私はさすがに市場でこそ買ったりしないが、出張買取では極力良い均一には適正な
値段をつけて買ってくるようにしている。
最近では妙な話、最高の良書を数冊売ってくれるお客様より、多くの均一本を売って
くれるお客様のほうが嬉しかったりする。
たとえ紙袋ひとつでも、なるだけこちらから出張するという営業姿勢は、お客様に運んで
貰ったのでは、重量の関係等でどうしても安売りにしか出来なさそうな本は置いて来ら
れて、高く売れるものしか持ってきて貰えなかったりする為だ。
一年365日のうち殆ど250日くらいはよそ様の玄関口や書斎に伺って埃まみれの本
を選り分ける。良書は良書の山として選り分けこれは一冊ずつ綿密に値段付けをし、
あとは均一を上中下に選り分ける。最後にこれを合算し、トータルでなるだけお客様に
納得していただきやすい金額を算出する。
こうして計算した結果お客様に納得して貰えないとガックリ。
良書、稀コウ書の類で折り合わないなら兎も角、カバーもボロボロ、背も歪んでいるよ
うな均一の下の山で折り合わないと、まぁ別に良いけどと思いながら、疲れのほうは
倍化する。
先日折り合わなかったお客さんは、今ドブに落ちた犬としてマスコミの袋叩きになって
いる有名音楽プロデューサーにクリソツの赤の他人だったが、あまり落胆している
当方を見かねてか、それだけは高めにつけられた一冊の良書だけは売ってくれた。
こちらとしては冷静に考えると有難い結果だったのだが、残ったゴミの山をおそらく
他の古本屋に見せるつもりのお客さんは多分がっかりすることになるし、それだけを
見せられた同業もため息をつくことになるだろう。
年に何件かはこういうケースがある。

by shanshando | 2008-11-04 14:12 | ■原チャリ仕入れ旅■


<< 夜半の雨      重箱の隅 >>