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上々堂(shanshando)三鷹

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2008年 11月 23日

ゴミ

先々々回の「ご不要の本…」というのは、
ずいぶん昔に、今はもう廃業なさったご同業の先輩から
聞いた話をそのまま書いたものですが、この回にコメントを
寄せていただいた弥太夫さんにひとつだけ説明しておきますと、
実は文中にある「ゴミ」という表現はちょっと微妙なのです。

古本屋は概して、自分たちの経験値だけで計って売れそうもない
と踏んだ本を、「ゴミ」と呼ぶ習癖があります。
それは世間一般で言う「ゴミ」という言葉から彷彿する「汚い物」と
いうイメージではありません。
BOOKOFFならいざ知らず、プロの古本屋は見た目のキレイ、キタ
ナイだけでは本を判断しません。
それこそ、関心がない一般の人から見れば「ゴミ」にしか見えない
「お宝」もあれば、新品同様ぴかぴかの「ゴミ」もあります。
要するに、売り先がお客であれ、同業であれ、お金になる本は「お宝」
そうでないものは「ゴミ」なのです。

しかし、どんな世界でも今やそうだと思いますけど、古本屋をやって成功
しようと思ったらむしろゴミの山に分け入るべきだという話がよく言われます。
有名な月の輪書林さんはまさにゴミの山から、貴重な資料を拾い出し、
脈絡をつけて目録に載せることで成功しましたし、BOOKOFFは大容量の
箱の中に玉石を択ばずに詰め込んで、選択を客に委ねる事で成功しました。

古本屋の世界に詳しい人に聞かせると、月の輪さんとBOOKOFFをならべて
評価するのは奇異だと思われるかもしれないですが、私は以前から両者の
着眼は非常に似てると思っていました。
違いは、片やが巨大な資本を背景にした画一的な営業展開を武器にしたのに対し、
片やは金が無かったので野生の勘と異常なばかりの執着心を武器にしたというに
過ぎなくて、ゴミを黄金に変える錬金術としての古本屋業という点では双子のように
似ているとさえ言っていいと思います。

つまり都市鉱山の話ではないですが、ゴミの中にこそ黄金は眠っている!
………かもしれない。
まぁ、あんまり眠ってないけど、ひょっとしたら眠っている!
………かもしれない。
だから私は、どんな駄目そうな山でも入念に一冊一冊調べます。
調べたところで、結局駄目なような気がするし、実際ほとんどの場合がやっぱり
駄目なんだけど、それでもやっぱりなんかの間違いで一冊だけでもとんでもない
お宝が眠っているかもしれない。その期待は大概裏切られるけど、今更他の
ことも出来ないので、ゴールドラッシュに乗り遅れた老いぼれ山師のように
しこしこしこしこ今日も本の流れる川に下りて砂金を掬って食いつないでいるので
ありました。


 
                          

by shanshando | 2008-11-23 15:45 | ■原チャリ仕入れ旅■


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