2005年 10月 29日
講談の衰退の歴史は永い。 もう昭和の初めくらいからずーっともう駄目だ駄目だ と言われて、かれこれ80年くらい衰退しっぱなしである。 今や、そもそも講談という藝がどういうものなのか知って いる人も少ないほどである。 前に興居島屋で講談の会を催した時、チラシをもっていろ んな人に挨拶してまわったさきで、「ああ講談ね、聞いた事あ るよ。うん広沢虎造っていうの。」と言われた。 虎造は浪曲である。 講談はようするに、会話を中心に話を進めて行く落語に対 して、地の文、つまり芝居で言うとト書きにあたる部分を 読んで物語を聞かす藝である。 衰退した原因は色々言われるが、ようするに語られるモノが 義理人情忠心孝行などの古い価値観による辛気くさい話が 多いせいだと言われている。 最近、三代目山陽の活躍により、徐々に見直される気運もあ ると聞くが、正直まだやっぱり衰退を止めるには至っていない ようである。 さて、その三代目山陽の師匠になるのが今日の主人公、二代目 神田山陽である。 自伝「桂馬の高跳び」を読むと、この人は元々講談界にとっては スポンサーのような存在だったらしい。 大阪号書店という、取り次ぎと出版社をかねた会社のお坊ちゃん として生まれ、講談に入れあげ聞楽亭という釈場の再建に取り組 むがそのうち好きがこうじて、自分でも高座に出るようになり、気 が付くと戦時中の統制などの事情もあって、店を手放し芸人になっ ちゃったという絵に描いたような道楽息子である。 お旦出身だから師匠らしい師匠がなく、そのため始めは自分で作った 品川連山という名を名乗っていたが、戦後大看板がいなくなった神田 派に迎えられ、落語家桂文楽の内輪として神田小伯山を名乗り、後 に二代目山陽を襲名した。 講談を生き残らせらせる為には、なにより時代にあった面白さを追求 しなくてはならないという考えから、女性弟子も積極的にとったため 現在残っている弟子の過半数は女性である。 その女弟子のひとり神田陽子さんと嘗てお会いしたことがあるが、華 のあるいい芸人さんだ。口跡も明瞭で明るい。まことに結構なのだが 私はどちらかと言うと昼日中の釈場で聞くおっさん芸人の渋い高座に 耳を傾けながら、うつらうつらとしたいほうなのだ。 そして陽子さんはじめの女性弟子、それから現山陽さんもこの先、 安泰だと思うのだが、心配なのはこのおっさん芸人のほうなのだ。 上野に嘗てあった有名な本牧亭がなくなり、今そこの名前を継いだ「 本牧亭」という飲み屋さんの二階の座敷で週末講談の会をやっている。 いろんな人々が書いている嘗ての釈場の雰囲気を残す貴重な空間である。 そこにいくと、今も尚この世の中から忘れられかけている藝に精進する 老若男女の講釈師たちが奮闘している。是非おでかけになってみて下さい。 ちなみに古本屋としても有名な田辺一鶴先生にもそこで会う事が出来る。 さて、戦後講談界の功労者二代目神田山陽は平成12年10月30日、老衰 による腎不全のため亡くなっている。享年91歳
by shanshando
| 2005-10-29 22:56
| ■古本屋の掃苔帖
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