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上々堂(shanshando)三鷹

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2005年 11月 05日

古本屋の掃苔帖 第九十六回 松田優作

松田優作が生きていたら今年56歳になる。
昔の時代劇だと、たとえば銭形平次を演じた大川橋蔵
のように本人が幾つになろうと、役の上では老けられ
ない為、むりやりメイクで若作りしたりしていて、あ
れはあれでグロくて良かったが、現代劇で、しかも映像
が鮮明になった昨今ではそうもいくまいから、松田優作
も年相応の役を演じていた事だろう。

山口猛著 ちくま文庫「松田優作、語る」を読むと、伊丹
十三の「お葬式」で江戸家猫八が演じた黒めがねの葬儀屋
の役は、初め松田に振られて、彼が断ったものらしい。
普段、陽気で饒舌なイメージのある猫八にあえて陰気にぼ
そぼそと喋らせたいたのは面白かったが、松田優作ならどう
演じただろうと思うとそれも観てみたい気がする。
いずれにしても、松田優作で考えていた役を猫八に振るとい
う不思議な思考方法が伊丹十三という人の値打ちだった。

松田優作は、野方図で陽気でクレージーな外見と裏腹に内面
の闇を感じさせる役者だった。陰と陽が一人の人格の中でグ
チャグチャになっている感じ、そこがその後ゾロゾロ出てき
た彼の亜流たちと彼の決定的な差だったと思う。

松田優作は1989年の明日11月6日、膀胱癌で亡くなっている。
享年40歳。戸籍では出生届が何故か遅れたため39歳になって
いるという。

by shanshando | 2005-11-05 18:55 | ■古本屋の掃苔帖


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