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上々堂(shanshando)三鷹

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2005年 11月 13日

古本屋の掃苔帖 第百三回 金田一京助

一昨年亡くなった子息の春彦氏が91歳。
金田一京助は89歳、長寿の家系なのだろうか。
言語学という学問は経済学などと違って脂っ気が
少ない感じで、精神衛生によいのかもしれない。

金田一京助本人は長命だったが、彼がかかわった
人物には夭折者が多い。
こんな風に書くと、なんだか金田一がその人たちの
寿命を吸い取ったように聞こえるが、むしろ夭折す
るような虚弱な人たちにとって、金田一は慕いよら
せる包容力を持っていたと考えるのが妥当だろう。
その代表的な二人が石川啄木と「アイヌ神謡集」の
著者 知里幸恵である。二人ともまごうかたなき天
才である。
他者のうちに見逃しがたい才幹を見つけると何処ま
でも世話をする実直さと寛容は、言語学という地味
な学問をするのにもきっとむいていたのだろう。

ただし、その寛容さはちょっとずれると変な側面に
も活かされている。
私たちの子どもの頃、辞典というと殆どのものが金
田一京介編とされていて、この人はよくこれだけ辞
典ばかり作っていたものだと、子どもながらに思っ
たが、実はそのほとんどは無償の名義貸しで実際
編纂に関わっていたわけではない。頼まれるとつい
OKしてしまうのだそうだ。
生前春彦氏はテレビで「父親が辞典なんて作ってい
るのを見た事ない」と云っていた。

彼の功績の中でやはり最大のものはユーカラ研究だ
と思うが、それらは知里姉弟を初めアイヌ民族の人
々の自主的な研究をおもんじた彼の人柄の功績だと
云って良いのだろう。

言語学の巨人金田一京助は1971年の明日11月14日
亡くなっている。

by shanshando | 2005-11-13 15:26 | ■古本屋の掃苔帖


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