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上々堂(shanshando)三鷹

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2005年 11月 18日

古本屋の掃苔帖 第百七回 フランツ・シューベルト

国際フランツ・シューベルト協会という団体がある。代表は
現在の二代目も初代の方も日本人であるところをみると、
日本を中心に活動している団体なのだろうか?
HPでシューベルトに関するさまざまな情報を提供している。
その中にハンス・D・キームレーという人の「シューベルトの
ほんとうの死因は?」という論文がある。
幼い頃読んだ伝記本によれば、確かシューベルトの死因は
腸チブスとなっていた筈だったが、あれはどうも子ども相手
のまやかしだったようである。(未だに大人むけの情報でも
この説をとっているものがある。)
シューベルトは1818年というから二十一歳か二十二歳の
頃、エステルハーチーという伯爵の城で小間使いと関係して
梅毒に感染している。このためシューベルトの死因は実は
梅毒によるものだという説があるが、この論文はそれを検証
した上で新説をうちだしている。
当時梅毒に限らず、あらゆる病気の特効薬とされていたのは
水銀で、梅毒患者にはこれを内服、塗布、吸入などを併用した
といわれている、それも徹底的に。塗布などは体のできるだけ
広範囲に繰り返し繰り返し塗り続けたらしい。当然の結果とし
て患者は脳神経などを侵されたうえで中毒死する。
さてシューベルトの場合、幸か不幸か貧乏なためこの金のか
かる治療が受けられずにいたようだが、いよいよ梅毒の症状
が重篤になったと思われる1828年11月、父親がつけていた
治療支出の控えに、12日から亡くなった19日までの間、高額
の薬代が記録されている。キームレ氏はこれは水銀療法が
おこなわれた証拠だというのである。
つまり、歌曲王シューベルトの死因は梅毒そのものではなく、
梅毒治療のため施された水銀による中毒死だったのである。
享年31歳。

by shanshando | 2005-11-18 17:03 | ■古本屋の掃苔帖


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