2006年 01月 06日
荒俣宏著「パラノイア創造史」には、たしか実験装置がおこす 物凄い放電の下で、平然と本を読んでいるニコラ・テスラの写 真が出ていたと記憶しているが、現在手元にないので確認でき ない。 オカルト系の雑誌では今も大もてのこの発明家は、マッドサイ エンテストとしての知名度ばかりが取り沙汰れがちだが、実際 現代の私たちの生活を見回しても、彼の存在無しではありえな かった物が多数ある。たとえば、蛍光灯、ラジオ、無線機、そも そもそれらの使用に不可欠な送電システム自体のもとを築いた のが、彼である。彼が科学者としてより、経営者としての利害を 優先させて直流システムに固執したエジソンに対抗して、交流 システムを提唱しなければ、送電技術は相当立ち遅れたであろ う。なのに何故か、エジソンは子どもも知っている偉人であり、テ スラはマッドサイエンテストと伝えられるのだろう? それは、おそらく彼の研究者としての純粋性に起因する。 子どもの頃に小さな雪玉が転がっていくうちに見る見る巨大に なるのを見て、自然の中にはまだまだ未知のエネルギーが隠さ れているのではないか?と感じた、その時の感受性と好奇心を 死ぬまで持ち続けたのである。 晩年になるにしたがって、彼の発想は荒唐無稽になっていく。 「地球システム」という巨大な構想がある。地球そのものを導体 として使用することで、地球上の何処に居ても無線で電波や情報 だけでなく、エネルギーまでとりだすことができるシステムである らしい。(間違ってたら御免なさい、私物理ずっと赤点でした) このシステムを使えば、送電線はおろか発電所まで不要になる そうで、もし成功していたら、エネルギー源をめぐる争奪戦や、貧富 の格差もなくなり、世界の歴史は塗り替えられていたかもしれない。 オカルトマニアの諸君たちは、この計画、実験は石油メジャーの陰謀 で挫折させられたという意見らしいが、実際のところテスラのこの理論 は、当時まだ信じられていたエーテルの存在が不可欠であり、1905 年にアインシュタインによって特殊相対性理論が発表され、エーテル の存在が否定されてからは意味をもたなくなったのである。 長身痩躯でハンサム、さまざまな特許のお陰で大金持ちの彼は、女性 に非常にもてたが、何故かあまり興味がなかったらしい。合理性を重ん ずる理数系の頭脳には、不合理なるがゆえに正しく、愛すべき女性の 魅力がわからなかったのかもしれない。孤独だった晩年は鳩だけを相手 に暮らしたらしい。 1943年の明日1月7日の深夜住居にしていたホテルの一室でひそかに 息を引き取っていたテスラは、翌朝掃除に訪れたメイドによって発見され た。享年86歳。 彼の遺体が葬儀のため運び出されると、入れ替わりにFBIのエージェント が、その部屋に押し込み金庫をこじ開け中の書類を持ち去ったらしい。 なんでも、彼の研究の中に最終兵器となりかねない物騒なものがあった とかで、スパイ小説みたいだが、のちに確認された事実だそうである。 ちなみにエジソンと一緒にノーベル賞が授与されそうになった時、彼だか エジソンだかのどちらかが拒否したといわれている。
by shanshando
| 2006-01-06 17:00
| ■古本屋の掃苔帖
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