上々堂(shanshando)三鷹

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2007年 03月 06日

府中狸

昨日は風が強かったが、日曜は春らしい日和だったので、府中市美術館に
出掛けた。「海を越えた出会い展」の最終日。
江戸の洋風画から明治になって洋画が本格的に根付くまでの代表的な作品
の展示だが、司馬江漢や亜欧堂田善などの洋風画が洗練されていて面白い
のに対し、明治の洋画は概ねつまらない。なんとか楽しめるのは、明治も初期
の武蔵野の情景を写した作品数点くらいで、後半の展示ははっきり言って殆ど
印象に残らない。飛ばし観るのも邪魔臭く、途中でやめて帰ろうかとしたところで
青木繁の「春の夕」に目を奪われた。
如何にも春夜らしい蒼い月の夜空を背景に、漂うように描かれた人物の顔がやはり
蒼い陰に包まれ、狂気を感じさせる。
画集で昔観た時はなんとも思わなかったが実物を観るとハッとする。学芸員の人
も後半の展示のつまらなさを救うために、ここにコレを配したのだな。と思った。

美術館のある府中の森は、嘗ての在日米軍府中基地の跡地の一部で、隣接する
敷地は未だに閉鎖されているが、ここには狸が出るらしく、不用意に近づかないよう
にとの看板が金網にある。
その昔、近所にある府中刑務所を脱走した受刑者がここに逃げ込んで暮らすうちに
、狸の化生にたぶらかされ交接し、数年のうちに多数の仔を生したのが今、府中市民
の中に多数混じっていて、あるものは市会議員まで勤めている。というのは今思いつ
いた与太話だが、そうであってもおかしくないくらいに鬱蒼としている。

さて、美術館を出た後、公園のカフェテラスで値段のわりに全然美味くないソフトクリ
ームを舐めて、狸に化かされたような気分になった後、芝生で寝転びながら、何処の
公園も同じ、水犬(無理やり小型に造り替えられたお座敷犬は、昔は水商売の女性の
飼う物だったのでこう呼ばれたのです。)の品評会を片目で睨んで、休息。
いくら親戚筋とは言え、こんなこまっしゃくれた奴どもに縄張りを荒らされたのでは、さ
ぞかし狸も面白くあるまい。

暫く休んで、さて帰るかと小金井街道に出て、「狸注意!」の看板を見ながらバスを待
っていると、70年配のふっくらとした女性が声をかけてきた。
「まぁ、狸が出るんですね。アメリカさんも変な物残してくれたものだわ。」
丸いお顔に浮かべた嫣然たる笑みはお歳に似合わず色めき、さぞかし名のある大姐御
とお見受けする。
なかなか来ないバスを待ちながらしばし世間話などしていたが、いつも原チャリ移動で
気の短い当方はそのうち痺れを切らしてタクシーを捕まえ、偶々同方向へお帰りの大姐
御にもご同乗いただいたところ、横付けされたお宅の前で降りる刹那に運ちゃんに折りた
たんだ5千円札を渡されている。当方の乗車賃まで出してくださるというのだ。
こちらが、お誘いしたのだからと辞退するのを振り切ったついでに、せめてお釣りをと言う
運ちゃんも振り切って、素早くお屋敷に入られたその動作は、益々70老女とも思えぬ
すばしっこさ。これはやはり、府中の森の親分狸かと恐れ入ってお言葉に甘えた。
ただ心配なのは、根っから人が良さそうだった運ちゃんが貰った5千円札があとでみたら
木の葉に戻っていたのではないかという一事のみ。

さて、府中市美術館次回展示は3月17日から「動物絵画の100年展」
ソフトクリームは不味いが、展示は美味しいのだ。是非にも出掛けるつもりでいるが、行
けば二次元に描かれた動物達に混じって、件の親分、イヤさ姐御狸にもおめもじできる
かもしれない。
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by shanshando | 2007-03-06 14:17 | ■原チャリ仕入れ旅■


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