人気ブログランキング | 話題のタグを見る

上々堂(shanshando)三鷹

shanshando.exblog.jp
ブログトップ
2007年 03月 25日

雨日閑話 (長いぞー!)

今朝ボロ家の雨戸をガタガタ開けると、雨気に混じってマイナスイオ
ンというヤツだろうか、気持ちのいい空気が鼻に飛び込んで来た。

雨戸という言葉を外国で日本語を習い始めたばかりの子供が見ると
どういうものを想像するだろう?
ユニークなインチキ先生がいて、
「ニッポンには、雨戸のほかに晴れ戸、曇り戸などがあって、その日の
気分次第で好きな天気を選ぶ事が出来るのデース。」
「OH!ニッポン イズ マジカル カントリーね!」なんてやってない
だろうか。

実際、外国に行ってインチキを教えて来る悪いヤツはいる。
知り合いの舞台美術家でドイツに仕事で行った時、仲良くなった現地
スタッフに「なにか日本のポピュラーソングを教えてくれ」と言われて、
当時日本の街頭で喧しかった「ショーコー、ショーコー、麻原ショーコー」
というのを教えて来たというヤツがいる。

さて雨であるが、いろんな商売で天気による当たり外れというのがあって、
喩えば私の体験で云うと、うどん屋の出前持ちは雨の日が忙しい。みんな
外に食事に出るのが面倒だからである。お茶屋はもう全然ヒマ、どんなに丁
寧に包装してもらっても湿気るんじゃないかと思うらしい。ペンキ屋さんは
雨だとヒマだろうと思うとそうでもない。「洗い」といって塗装前の洗浄の仕事
をその日に済ませたりするからである。
魚屋、八百屋、寿司屋に居酒屋、客商売は概ね雨を嫌うが、曜日によって
は歓迎という商売もある。ストリップ小屋である。

私は若い頃公演で作った借金を返すため暫くストリップ小屋を金粉ショーで
回ったことがある。私のは松明やらなんやら振り回してやる虚仮威しのインチ
キ芸であるから長持ちはしなかったが、それでも仲間とあわせて三ヶ月で
七百万程度の金を返す事が出来た。

若い時の苦労は買ってでもするなというが、苦労と言う認識が本人になければ
何事も良い体験で、その頃のことを話し出すと切りがないから、また後日にす
るが、何しろストリップ小屋は意外と日曜日の雨を喜ぶのである。
つまり、日曜日に雨が降ると戸外でやるレジャーが出来ないから、家族連れが
……というのはないけれど、閑な兄ちゃんたちがストリップを観に来るのである。
兄ちゃんだけではない、一日入れ替え無しで4ステージやるのだが、朝から弁当
もってかぶりつきでラストまで観ている爺さんが居たりするのだ。

雨の日曜は良いといっても勿論程度もんで、台風はさすがに困る。いくら何でも
暴風雨が吹きすさぶ最中わざわざ裸を観に行こうなどという、そんなスケベの決
死隊みたいな客は少ない。
あれはやっぱり客が少ないとダレるもので、一日弁当持ちの常連爺さんぐらいしか
いないステージに何度も同じ事をしに出ていくのは辛い。
「おじいちゃんもう帰ったら。」なんてはっきり云う踊り子さんもいたりした。
悪い事に我々のチームは芸は無いし、色気もないが何しろ派手だから構成上最後
の出番だったりしてしまう。

池袋の小屋に出ていた時やはり大雨の日があって、もう八時くらいから客は一人。
一人でも入場料払って入った客がいればやらなければならない。楽屋ではみんな
祈るような気持ちで「早く出て行け。」と祈っているが、これがまた肝の据わった客
で帰らない。しょうがないから4回目のステージを開けて、トップから順に出て出番
が終わったら「お疲れさまー」。タクシー呼んで帰って行く。

我々はトリである。10時過ぎまで出番は来ない。「ええい、畜生め!早上がりして一杯
やりたいのに無粋な客だ!」
 よっぽど出番前に飲み出してやろうかと思ったが、火を使うから酔っぱらってやるわけ
にはいかない。呪いながら金粉塗ったくって、前の出番のお姉さんのラス前の曲を聞
くと袖に控える。やがて、自分たちの曲が流れて踊り始めるがもう早く済ませたい一心
だから手抜きもいいところ。松明なんか何時もの半分も回さない。「いつもより少なめ
に回しておりまーす。」というやつだ。いくら手数を減らしても、曲で時間は決まっている
から短くなりはしないのだが、もう完全にやる気なしなのだ。

やがてラストの曲が流れて決めのポーズの後、お辞儀して引っ込もうとすると、一人残
ったそのお客が我々を呼ぶ。ナンダロウと戻るとティッシュペーパーに包まれたものを相
棒の女の子に渡している。楽屋に帰って大急ぎで開けてみると一万円札が三枚折り畳
まれて入っていた。ああ手抜きするんじゃなかった。

なんだか結局ストリップの話になっちゃったが、とにかく雨も商売によりけりという
話で、古本屋もちょっとストリップ的な傾向がある。
雨の日曜は快晴の日曜より悪くなかったりするのだ。
それはそうだろう。せっかく良いシーズンになって海も山も綺麗なのに埃っぽい古本屋
に行こうという人は変わっている。しかし皆さん無個性人間の多い現代において変わっ
ている事は素晴らしいことなのであります。ですから皆さん来週もしいい天気になっても
上々堂に来てね。連休中もよろしくお願いしま〜す。

by shanshando | 2007-03-25 14:09 | ■原チャリ仕入れ旅■


<< 接客      図書館 >>